研究課題
重質油は流動性が低く、その粘性を下げて地下から取り出す必要がある。一般的な採油法としては重質油の貯留層に対して、スティームを圧入し粘性を下げて生産する回収法が知られている。しかしながら近年スティームにさらに何らかの溶剤を混入させる考えも提案されており、その際にはどのような溶剤が最適であるかの評価が必要になる。多くの候補の中から短時間に経済的に最適な溶剤を選定することは、繰り返し的な実験による試行錯誤によるアプローチは効率が悪い。本研究ではこの課題解決のため、まずは重質油のデジタルオイルの構築方法の検討を進める必要がある。次に構築された重質油の分子モデルに対して、分子動力学を用いて溶剤の評価が可能になれば、将来の重質油の開発に大きく寄与する。重質油の分子モデルを構成するために、デジタルオイルではアスファルテン分、レジン分そして飽和炭化水素分、芳香族炭化水素分の代表分子群を混合したものを重質油全体の分子モデルとする。原油サンプルに対して化学分析により、各留分の元素組成,平均分子量,炭素原子の分子構造の情報を取得し、QMR(Quantitative Molecular Representation)法を用いて原油の平均構造を有する代表分子集合を作成する。この際、非芳香族分子の作成と分子量分布へのフィッティングを可能にするように QMR 法を拡張し,分子モデルの精度向上が必要になる。次に溶剤の圧入による増進回収効果を評価するため、溶剤を添加したときの物性変化を分子動力学を用いて評価する。圧入する溶剤としては他の原油増進回収法で利用されているメタンと二酸化炭素、ノルマルアルカン、芳香族,窒素等の溶剤について検討する。具体的には各溶剤が重量比で10 wt.%を添加した場合の物性変化を、地下での貯留層の温度圧力条件で分子動力学を用いてシミュレーションを行い比較する。
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