研究課題/領域番号 |
17K06989
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
渡邊 隆広 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (40436994)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 津波堆積物 / 年代測定 / 化学判別 / 仙台平野 / 宮崎平野 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、津波堆積物の年代測定および同定手法の確立に必要な基礎データとなる化学分析を実施した。仙台平野において採取された土壌堆積物から、津波イベント層を含む試料を選別し分取した。プラスチック製のユーチャンネル容器により1cm幅で採取した試料を長さ10cm程度で切断し、樹脂により固化した後に表面を研磨した。各種化学測定の分析条件を検討するため、研磨後の一部の試料をテストサンプルとして使用した。X線分析顕微鏡により試料表面のカルシウム、鉄等の主要元素やチタン等の化学データを取得した。また、宮崎平野において採取されたボーリングコアについても適切な試料を選別し分取した。半割したボーリングコア試料を切断し、樹脂により固化した後にX線分析顕微鏡により、上記と同様に試料表面の化学データを取得した。加えて、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析により微量元素の測定を実施するため試料を適切に成形した。得られた測定結果は、別途実施した蛍光X線分析による化学組成データとよく一致しており問題なくデータの蓄積が可能であることが示された。平成29年度に得られた結果は津波堆積物の化学判別に使用する微量元素のノーマライズに必要なデータとなる。堆積物試料の組成により化学成分は希釈等の影響を受ける。従って砕屑物由来となるチタン等によるノーマライズが有効となる。また、X線分析顕微鏡等による化学成分のマッピングにより各元素の濃縮箇所の把握が可能になり、化学成分の形態解析に重要となるデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要な試料の確保、およびテストサンプルを用いた測定手法の確認は完了し、多量データの取得条件を整えることができた。平成29年度は津波堆積物および上下層の化学データを連続的に取得することに成功した。得られた化学分析データは、実施計画に記載した「年代測定法開発」、および「津波堆積物の同定手法開発」に必要な基礎情報となる。微小領域の連続的な化学分析データは、年代測定において重要な鍵相となる火山灰等の検出や同定につなげることが期待される。仙台平野の津波堆積物直下において多量の海水侵入が要因と考えられる元素の濃縮が見られた。より詳細な分布の把握と濃縮メカニズムの推定により津波以外のイベント層との区別についても情報が得られると期待される。平成29年度は国内シンポジウムにて研究成果の一部を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、津波堆積物の年代測定、および同定手法の確立を目指す。過去に繰り返し発生した歴史津波の規模を明らかにすることにより、将来起こりうる大規模な津波災害の防災、減災につなげることが期待される。被害規模を復元するためには、地層中から津波堆積物を検出し分布範囲を把握することが重要である。しかし、津波堆積物を検出する際に次の2つの課題を解決することが不可欠である。「1.津波堆積物の形成年代の決定」、「2.津波以外の要因によるイベント層との区別」本研究では、上記2点の問題を解決し、科学的なデータにもとづいた津波イベント層の同定手法の確立を目指す。年代決定と化学分析に加え、津波堆積物中の化学成分の形態解析による新たな「津波堆積物の判別手法開発」を試みる。平成29年度は津波堆積物の化学データを得ることができた。今後は津波堆積物の判別手法の確立に必要な化学データの蓄積に加え、化学成分の形態解析および津波堆積物の年代測定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)測定試料数の調整により消耗品の使用量を変更したため。 (使用計画)測定試料数を再調整し平成30年度中に分析用消耗品の一部として使用する。
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