研究課題/領域番号 |
17K06990
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
飯尾 俊二 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (90272723)
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研究分担者 |
筒井 広明 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (20227440)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トカマク / ディスラプション / ヘリカル磁場 / 簡易ヘリカルコイル / 位置不安定性 |
研究実績の概要 |
プラズマ位置の安定作用のある簡易ヘリカル形状コイルを用いた受動的制御により、トカマク型核融合装置の突発的放電停止に至る主ディスラプションの発生を抑制できることを、小型トカマク装置PHiXにて実証することを目的としている。 PHiXトカマクは水平誤差磁場が大きかったため、昨年度に18本のTFC配置の真円からのずれと真空容器との偏心を1ミリ程度以下に低減する再配置作業を行った結果、ポロイダル磁場コイル(PFC)に誤差磁場を補正するような電流を流さなくても、着火するようになった。しかしながら、放電の再現性が依然としてよくなく、プラズマ断面の縦長化ができていないため、サドル型コイルで構成した簡易ヘリカルコイル通電によるプラズマ垂直位置の安定化作用を明確にできる段階にはない。真空容器上下に取り付けられたSDCがプラズマから遠く、十分な効果を発揮できないと考えられる。 放電の再現性が悪い原因を探ったところ、鉄心の漏れ磁場が無視できず、磁化の履歴現象の影響も受けていることが判明した。そこで、COMSOL Mutiphysicsを用いて3次元有限要素法で鉄心を含む磁場計算を行って、再現性のよいプラズマ着火が可能なポロイダル磁場がほぼゼロの位置を調べるとともに、鉄心の磁化による誤差磁場を最小化する初期通電パターンを実験で特定し、プラズマ断面縦長化の調整を進めた。 並行して、プラズマ位置安定化作用がサドル型コイルよりも強いと数値計算では期待できるPS(展開図ではコイル軌道が平行四辺形)コイルに働く電磁力を評価し、PHiXトカマクへの取り付け構造の検討を進めた。 また、鉛直方向の線平均電子密度を計測するマイクロ波を用いた干渉計を1チャンネル整備した。電子密度はディスラプション発生領域を規定する1つのパラメータであるからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実証実験を行うPHiX装置に大きな水平誤差磁場があったために、放電調整とプラズマ位置制御の最適化が十分に進んでいない。主要な誤差磁場の発生原因は、プラズマ電流の誘導に用いている鉄心へのトロイダル磁場の一部の侵入と漏れ出しであることが判明したものの、鉄心のヒステリシスに影響されるため、その低減は容易ではない。トカマク放電時の鉄心を介する誤差磁場を最小化する初期通電パターンを実験で調べることに時間を割いたために、PS型簡易ヘリカル形状コイルは電磁力評価に留まり、その製作と設置は最終年度にずれこんだ。
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今後の研究の推進方策 |
PS型簡易ヘリカル形状コイルをPHiX装置に設置して実験を開始する。簡易ヘリカル磁場の効果を確実に引き出すために、90 度毎に配置した4本のコイルを用いる。簡易ヘリカルコイルに通電しなければ主ディスラプションが起きる高電子密度放電や低安全係数(プラズマ電流を強く流して磁力線のねじれピッチを高めた)放電において、激しいMHD 不安定性が励起されてプラズマ圧力の急減(熱消滅)が発生しても放電を維持し続けられることを示す。 簡易ヘリカルコイルに通電すると、プラズマは軸対称ではなくなるが、真空容器内設置した軸対称なポロイダル磁束ループ14 本を用いて平均的プラズマ位置を評価する。そして実験の再現性をよくするために、プラズマ位置のフィードバック制御を改良する。 ディスラプションによる電子密度分布の変化を測るために、真空容器内に導波管とホーンアンテナを設置し、マイクロ波干渉計を水平方向に多チャンネル化する。 並行して、エネルギーが極小になるプラズマ形状を平衡として求める自由境界でのVMEC コードを利用し、エネルギー原理を使って位置安定性解析を行う。通常のVMEC には真空容器の効果が反映されていないので、これを境界条件として取り込めるよう改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
節約ができたため、残額が生じた。次年度に繰り越して簡易ヘリカル形状コイルの製作費等に充てる予定である。
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