研究課題/領域番号 |
17K06996
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
高村 秀一 愛知工業大学, 総合技術研究所, 教授 (40023254)
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研究分担者 |
上杉 喜彦 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90213339)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / タングステン / ダイバータ / 放射冷却 / 皺構造 / 重水素 / ウイスカー / 窒化 |
研究実績の概要 |
新しいプラズマ-表面相互作用過程として、以下の研究を展開している: (1)磁場閉じ込め熱核融合炉におけるダイバータの深刻な熱負荷低減のために、種々のガスの導入による周辺プラズマ放射冷却の可能性が検討されている。その一つがNeである。NeプラズマとW材料の相互作用を広い表面温度に亙って系統的に調べた。W表面内のNeのピン止め効果により表面層を硬化し、熱収縮応力が座屈を生み出し皺構造形成に至る座屈モデルを提案した(国際誌Nuclear Fusion誌に掲載)。 (2)炭化チタン(TiC)等の高融点ドープ材をW中に分散することによりWの機械特性を改善する試みが行われている(TFGR-W)。これらのW材料に対してHeプラズマ誘起のナノ構造であるfuzzが高温で消失するアニール現象に焦点をあてた。これはfuzzの産業応用のみならず、核融合炉における熱パルスに対する応答にも影響する。ドープ無しのPM-Wの場合、fuzzは1300℃・1時間のアニールにより完全消失したのに対して、ドープされたWではドーパントがピン止め効果をもたらし、この消滅を阻む事が実験的に明らかになった。本成果はSurfaces & Interfaces誌に公表された。さらに各種ドープW表面にフェムト秒レーザーにより周期的表面構造(LIPSS)を形成して、fuzzを成長させるという斬新な試みへと研究が展開しつつある。 (3)最近、冷却用放射体として窒素が注目されている。重水素・窒素混合プラズマを生成し、W表面との相互作用を実験的に調べた。照射表面は青と茶の色合いを呈する。表面形態や化合物形成等の同定のために多様な表面解析が求められ、現在進行中である。既に、ウイスカー状のナノ構造形成が認められ、窒化化合物との関連でX線回折やラマン散乱等の表面解析を進めつつある。この経過は6月に開催される、核融合連合講演会で発表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
核融合原型炉における、プラズマ粒子・熱処理としてダイバータの果たす役割は大きい。ダイバータ・アーマー固体材料としてはタングステン(W)材料が本命であるが、プラズマ粒子・熱負荷について徹底的な調査が必要である。従来にない新しいプラズマ-W壁相互作用を明らかにするすることが学術的に重要である。当初、(A)放射冷却体として重要な希ガスがW表面にもたらす微細皺構造形成物理過程の調査、(B)高融点炭化物ドープのW材料のfuzzやレーザーマーキングのアニール修復過程、(C)パルス熱負荷に伴うプラズマ運動量流入がもたらす力学的効果。以上三面から研究を展開している。(A)についてはNeガスに伴う皺構造形成形成機構を座屈モデルで説明し、Nuclear Fusion誌に公表するまでに至った。更に、重水素を含む窒素ガスについてはW表面にウイスカー状のナノ構造が初めて発見され、窒化物形成との関連で調べられつつあり、来る平成30年6月に開催される核融合連合講演会で発表の予定である。(B)については新たにLIPSSを導入し、ドープW表面にこれを形成することに成功した。fuzzとの共存性、アニール修復を調査する基盤ができた。(C)に関しては、筑波大学にて11月に開催されたPMIF2017において口頭発表すると共に、Plasma Conference 2017において北大の佐々木浩一教授の溶融錫陰極を用いたマグネトロンスパッタリングにおける錫の飛散を運動量注入に加えてテーラーコーンとの関連で議論できた。更に、負パルス印加に伴う放電陰極における異常放電抑制のための絶縁強化した陰極を製作中である。
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今後の研究の推進方策 |
(A)Wへの窒素の効果について、試料断面のFE-SEMやTEM観察を実施すると共に、ラマン散乱、X線回折、表面抵抗測定など多様な表面分析を通して全貌を明らかにする。 (B)TFGR-W/TiCドープ材料表面に10mm角のLIPSSを形成し、ヘリウムプラズマ誘起fuzzを成長させ、アニールあるいは表面拡散の両効果を調べる。 (C)熱パルスで融点までの昇温で実績のあるWよりさらに表面溶融の効果の大きいMo箔(厚み:30 ~50 ミクロン)でMoダスト放出の観測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 消耗品購入の際の10千円以下の残が発生した。無理に帳尻合わせせず次年度に有効活用するため。 (使用計画) W材料購入等の補填に有効活用したい。
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