研究課題
核融合システム内のトリチウム収支やその排出挙動、真空容器内に滞留するトリチウム量の解明を目的として、2017年3月から開始した重水素プラズマ実験で、大型核融合試験装置(LHD)の水素同位体排出挙動・物質収支を評価している。2020年度は、4回目となる重水素プラズマ実験を対象とし、これまでに整備した計測機器を駆使してトリチウムを含む排気ガス組成分析を実施した。これまでの4年間の観測から、トリチウムの放出割合(発生量に対する排出量)が徐々に増加することが確認された。一方で、各実験サイクルでのトリチウム放出割合は50%以下であり、真空容器内のトリチウム滞留量が増加することを確認した。平均トリチウム放出割合は、トリチウムが生成される重水素プラズマ実験中に低下することから、重水素核融合反応で生成されたトリチウム(1.01 MeV)が、真空容器壁内に打ち込まれると容易に放出されないことを示唆している。このようなプラズマ対向壁中に滞留したトリチウムを除去するため、高周波加熱法を用いてプラズマ中に高エネルギー粒子を生成し、真空容器壁からのトリチウム放出を試みた。高周波加熱法として、高エネルギー粒子を生成するイオンサイクロトロン共鳴加熱法を適用すると、電子を加熱する電子サイクロトロン共鳴加熱法を適用した場合と比較して、トリチウム放出速度が大きくなることが確認された。高速粒子によってプラズマ対向壁の表面近傍からトリチウムが放出されたことを示唆している。長期に渡る観測から、重水素核融合反応で生成されたトリチウムは、真空容器内に打ち込まれるが、その半分は材料中から取り除かれることが明らかとなった。本研究課題では、排出されるトリチウムに着目し、トリチウムの放出経路、放出挙動、物質収支、化学形態を明らかにした。一方、真空容器内の残留量の実測や、トリチウムの分布を明らかにすることが課題として残った。
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