研究課題/領域番号 |
17K07001
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
本多 充 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 上席研究員(定常) (90455296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大域的最適化手法 / 機械学習 / 人工ニューラルネットワーク / ハイパーパラメータ最適化 / 硬い輸送モデル / 統合モデル / MPMD / JT-60U |
研究実績の概要 |
令和元年度は大域的最適化手法を用いた定常輸送コードGOTRESSと機械学習によるモデリングの開発・シミュレーションを中心に遂行した。当初計画ではTASK/TXと運動論的コードの結合を中心に据えていたが、GOTRESSを中心とした研究の進展が予想を上回って順調に進んだため、そちらに注力した。ジャイロ運動論の知見をふんだんに取り込んだ最も高度な輸送モデルであるTGLFは硬い輸送モデルであるため扱いづらいが、GOTRESSはその特性から数値的安定に扱うことが出来る。一方、GOTRESSはTGLFを百万オーダの回数呼ぶためにスパコンを用いても計算時間が掛かってしまうことが問題であった。そのため、機械学習法の一種である人工ニューラルネットワークモデルを用いてTGLFの振る舞いを模擬する代理モデルを構築した。GOTRESSは遺伝的アルゴリズムを用いているため、学習に必要なデータを大量生成するのに極めて適したコードである。TGLFの代理モデルはTGLFの振る舞いを良好に再現し、計算速度は1万倍程度加速された。さらに、ニューラルネットワークモデルの最適化手法を用いることで、更なる高精度の代理モデルを構築することにも成功した。代理モデルはJT-60U放電も良好に再現する事を確認している。本成果は論文誌で発表された。 GOTRESSを核とした統合モデルGOTRESS+に、プラズマ周辺領域にできるペデスタルの幅と高さを予測するモデルEPED1を結合することに成功した。 平成30年度に取り組んだGOTRESSとTGLFのMPMD結合の知見を生かし、これまでSPMD結合であった非定常輸送コードTRESSと運動論コードGKVからなるTRESS+GKVをMPMD結合に書き換えることに成功した。計算速度はそのままに、コードの開発を大幅に加速させる可読性と保守性を兼ね備えたコードとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GOTRESSを核とした研究の進展によりTASK/TXコードの開発は来年度以降に持ち越したが、GOTRESSの特長を活かした人工ニューラルネットワークモデルの開発によって、大規模並列計算と機械学習手法を融合した研究分野の開拓に成功している。令和元年度に実施した研究課題については国内学会や国際学会で発表済みであり、GOTRESSについて書かれた論文1編がAIPのPhysics of Plasmas(PoP)において出版された。当該論文はAIPとPoPのSNS(Twitter, Facebook)で取り上げられ、そのために期間限定のFree Access論文となり、多くの閲覧がなされた。 それゆえ、計画は概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
大きく分けて3つの研究課題に取り組む。 ①GOTRESSのアルゴリズム改良により更なる高速化を目指す。統合モデルGOTRESS+ではEPED1の取り込みに成功したため、ペデスタルを含めたプラズマ全領域の予測が可能となった。進展したGOTRESS+を用いてJT-60SAプラズマの予測や運転シナリオ開発を行う。 ②TASK/TXの多粒子種への拡張を行う。とりわけ不純物を取り込んだ系へと拡張することで、純プラズマでは現れない多くの現象を扱うことができる。 ③TRESS+GKVに電流拡散ソルバを導入し、電流拡散時間程度で平衡が時間発展する状況における初のジャイロ運動論コードと結合した輸送シミュレーションを実施する作業に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は当初予定の支出額に加え平成30年度に生じた次年度使用額分も使用したが、平成30年度に生じた次年度使用額が多額であったため、引き続き次年度使用額が生じた。 令和2年度は研究の進展により複数回の海外出張が計画されているが、COVID-19によるパンデミックのため見通しは立てづらい状況にある。一方で、最新のFortran規格に基づいたコードの開発にはコンパイラなどの数値計算環境の整備が必要であることが判明したため、これに使用する計画を立てている。
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