研究課題/領域番号 |
17K07002
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
飛田 健次 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所, 副所長(定常) (50354569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合炉 / システム設計 / アルファ粒子 / チャネリング / イオン温度 / 電子温度 |
研究実績の概要 |
核融合炉で発生するアルファ粒子は、炉心プラズマ中における減速過程でクーロン衝突によってプラズマを加熱するため、核燃焼の持続に不可欠なエネルギー源となる。問題は、アルファ粒子は速度の近い電子にそのエネルギーの多くを移行させ、核融合反応に寄与するイオンは電子から間接的にエネルギーをもらうところにある。このアルファ粒子のエネルギーを効率良くイオンに移行させて核融合出力を上昇させる概念として提案されているのがアルファ粒子のチャネリングである。 このチャネリングを可能にすれば炉心プラズマのイオン温度は電子温度よりも高温となるが、これまでの核融合炉研究では双方の温度は等しいという仮定でシステム設計されており、温度が異なる場合を想定した設計例はない。この問題に取り組むため、本研究では、まず、核融合炉システム設計コードでプラズマのイオンと電子の温度を独立に扱えるように改良した。このコードを用いて、イオン温度と電子温度の比が核融合炉のシステム設計に与える影響を分析した。これまでの核融合研究ではイオン加熱は核融合出力の上昇に寄与すると考えられており、これがアルファ粒子のチャネリング研究のインセンティブとなっていたが、核融合炉の設計における諸パラメータの拘束条件(特に、プラズマのベータ限界)を考慮すると、イオン加熱は必ずしも優位に働かないことが明らかになった。 比較的低密度で電子温度がイオン温度よりも高い(チャネリングのない)プラズマ領域も炉システム上は有望な設計領域になる可能性があるため、来年度の研究の準備として、アルファ粒子とプラズマのエネルギー輸送を適切に扱うことができるプラズマ輸送解析コードを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルファ粒子チャネリングによって生じうる高イオン温度プラズマの特徴を核融合炉システム設計の視点から分析した。これまでイオン加熱は核融合出力の向上に繋がり魅力的な核融合炉につながると考えられてきたが、設計パラメータの整合性を考慮するとイオン加熱は必ずしも核融合出力の上昇に寄与するわけではないことを見出した。次年度の研究では、当初計画では考慮していなかった電子温度>イオン温度となるプラズマ領域の設計検討を進める必要性を示唆する結果を得た。この成果により、当初計画した3年間で本研究を完了できる見通しが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までの研究結果の妥当性を確認するため、核融合炉システム設計コードの解析モデルの適用限界を分析し、必要に応じて解析モデルの改訂を行いつつ、研究結果の再確認を行う。 核融合炉設計の観点では、電子温度>イオン温度となる領域が、システム設計の観点で優れたプラズマ設計領域になりうることを示す結果が得られてきたことから、新たに電子加熱の数値解析を進める。この目的のためプラズマ統合シミュレーションコードTASKを導入し、核融合炉条件ででプラズマ輸送解析を行い、プラズマ輸送モデル、プラズマ密度の条件とイオン温度と電子温度の比(出力)の関係を明らかにする。 3年間の研究を総括し、アルファ粒子チャネリングの有効性について総合評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力及び外部発表のための研究旅費および研究支援のための謝金を計上していたが、研究実施のための旅費が比較的少額にとどまっただけでなく、成果発表の経費の多くは所属機関が負担したこと、研究支援のための謝金等の支出が無かったことにより、計画の半分程度を繰り越す結果となった。次年度は、東北大学・高橋宏幸助教を研究分担者として追加し、研究経費の一部を分担金として支出し連携して本研究を推進する計画である(分担者追加申請許可済み)。また、今年度未使用であった人件費・謝金の繰越金については、次年度に専門家によるプラズマ輸送及び電子加熱シミュレーションの研究支援のための謝金および研究発表経費として使用する計画である。
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