研究実績の概要 |
核融合プラズマ中の核融合反応で発生するアルファ粒子はそのエネルギーの多くを電子に移行させ、核融合反応に寄与するプラズマイオンは電子から間接的にエネルギーを受け取る。これに対し、アルファ粒子のエネルギーを直接イオン加熱に結びつける概念として提案されたのがアルファ粒子チャネリングである。本研究では、チャネリングで期待される高イオン温度プラズマが核融合炉の運転領域および設計領域に及ぼす影響を炉システム設計の視点から分析した。 2020年度は、核融合炉システム設計コードの不具合を解消し、核融合炉の運転・設計パラメータの再解析を実施した。その結果、核融合炉のサイズを固定した場合、高イオン温度を持つ核融合炉の運転領域は低密度側にシフトするが、温度-密度空間における運転領域の広さは通常の核融合炉条件の場合と大きな違いがないことが明らかになった。この解析を通して、この運転領域を決定づける重要なパラメータは、ベータ値、プラズマ閉じ込め改善度、電流駆動パワー、核融合炉に求められる電気出力下限の4つであることを示した。 また、核融合炉の寸法を幅広い範囲でスキャンしたシステム解析から、プラズマ主半径Rp-小半径a空間における核融合炉の設計領域は、高イオン温度の場合には、コンパクトな炉設計を可能にする小Rp, 小a方向に著しい拡大が見られた。この結果は、アルファ粒子のチャネリングによる高イオン温度化によって、コンパクトな核融合炉の展望が拡がることを示唆する。当初の予想どおり、このような設計領域拡大の要因は、閉じ込め改善度などの炉心プラズマに対する要求の緩和にあることを明らかにした。
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