研究課題/領域番号 |
17K07003
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武智 学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 トカマクシステム技術開発部, 上席研究員 (40370423)
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研究分担者 |
井上 静雄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 主任研究員 (80757956)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 磁気流体不安定性 / 負磁気シアプラズマ / ディスラプション / 内部輸送障壁 / トカマク |
研究実績の概要 |
強負磁気シアプラズマは非常に高い閉じ込め性能を持ち、高い自発電流を持つ運転と整合性が高いため、定常運転に適した放電であるが、コラプスやディスラプションが頻発し、その発生機構が未だに明らかでない。圧力の高い、規格化ベータ値βN=3程度以上の場合、理想型不安定性の圧力駆動型のキンクバルーニングモードやこれを元とする抵抗性壁モードがこれらのプラズマ崩壊の原因となり、この不安定性の同定はMHD安定性解析コードによって可能である。βN=1以下においてもプラズマ崩壊に至ることが少なくないが、これまでに、これは中心部の抵抗性インターチェンジモードと周辺のテアリングモードの結合、または、ダブルテアリングモードが原因とされている。しかしながら強負磁気シアプラズマにおいては、理想型不安定性においても、βN=1以下にまで閾値が下がることを報告者はコード解析によって確認している(EPS 2005 M. Takechi)。これは、強負磁気シアプラズマの生成過程における、プラズマ電流のランプアップ中に、周辺に多くの電流が流れることが原因となる。即ち、キンクバルーニングモードのキンクの寄与が大きくなり、低ベータでの崩壊となってしまう。本年度は、JT-60Uの最後期の実験において行われた非誘導電流駆動プラズマを対象として解析を行なった。これらのプラズマは2005年に報告した強負磁気シアプラズマと比較して比較的穏やかな負磁気シアプラズマであるにも関わらず、同様に非常に低い規格化ベーター値にてプラズマ崩壊が観測され、この原因はコード解析によって抵抗性壁モードと同定された。このことは、低ベータでの崩壊のさらに多くが理想型不安定性で説明できることを示唆している。しかしながら、安定性解析によって理想型不安定性で説明できない放電も残るため、今後はこれらの放電について、精査を行うことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DIII-Dにて負磁気シアプラズマ実験を行う予定であったが、COVID-19の影響により、実験参加は行わず、JT-60Uのデータ解析を中心に行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度においても、COVID-19の影響の回避が困難と思われるため、引き続き、JT-60Uにおける負磁気シアプラズマの実験結果の解析を行う。プラズマ回転の空間分解能、時間分解能が大幅に改良されたJT-60Uの最後期の実験において、正確な安全係数分布が得られている非誘導電流駆動プラズマ実験等を対象として解析を続ける。JT-60Uにおける強負磁気シアプラズマにおいては、ディスラプションの分類を行う。分類にあたっては、(1)ディスラプション時の予兆振動の有無、(2)予兆振動の成長率、(3)安全係数、電流分布、イオン温度、電子温度、密度の分布、(4)プラズマ回転及びプラズマ回転分布などについて着目して解析を行う。予兆振動は磁気センサー及びECE、軟X線計測などで調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国の実験装置DIII-Dにて実験を行う予定と国際会議への参加予定があり、旅費を計上していたが、COVID-19の影響により、これらは延期となっている。COVID-19の影響が長引くことが予想されるため、JT-60Uのデータ解析を中心に行うこととし、MHD安定性解析コードを多く行うために必要な高性能計算機の導入を予定している。
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