研究実績の概要 |
放射性同位元素(RI)は様々な分野で利用されており、医学分野においてはがんの診断や治療などに利用されている。医療用RIの生成に重要な核反応断面積について、欠落しているデータ及び精度向上が必要なデータを系統的に測定することで、医療分野へ貢献する。特に、入手が容易な自然存在比の金属箔を標的とし、陽子、重陽子及びα粒子などの荷電粒子を入射粒子として用いた場合の医療用RI生成核反応断面積を系統的に測定する。このような系統的な実験結果により、不要なRI生成を抑えつつ、目的とする医療用RIの生成効率を最大化するような反応及びエネルギーを調べることが可能となる。 本年度はまず、実験で標的とする高純度(99%以上)の金属箔(In, Y, Yb, W, Zr)を購入した。さらに、ビーム強度やエネルギー減衰を観測するためのモニター反応用金属箔(Al, Ti)を購入した。これらの金属箔を用いてエネルギー依存断面積を測定するため、積層箔の構成について検討した。 その後、それらの金属箔に対して、理化学研究所AVFサイクロトロンで50MeVに加速したα粒子を照射し、それぞれの反応から得られる医療用RI(89Zr, 99Mo, 117mSn, 177Lu, 188Re等)の生成断面積測定実験を行った。現在測定結果の解析を進めており、Inへのα粒子入射による117mSn生成核反応など、結果が得られた内容から順次発表している。さらに、別途用意した標的に関する実験の解析を進め、Pdへの重陽子入射による103Ag生成核反応、Zn標的へのα粒子入射による68Ge生成核反応については成果を論文としてまとめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
購入した金属箔(In, Y, Yb, W, Zr)に対する50MeVのα粒子入射反応実験など、これまでに行った実験を実施し、現在解析を進めている。結果が得られた実験の発表、論文化を順調に進めている。一方、ハンガリー原子核研究所で実施を予定していた陽子入射反応実験については翌年度以降実施することになった。 このように、おおむね順調に進展している。
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