研究実績の概要 |
放射性同位元素(RI)は様々な分野で利用されており、医学分野においてはがんの診断や治療などに利用されている。医療用RIの生成に重要な核反応断面積について、欠落しているデータ及び精度向上が必要なデータを系統的に測定することで、医療分野へ貢献する。特に、入手が容易な自然存在比の金属箔を標的とし、陽子、重陽子及びα粒子などの荷電粒子を入射粒子として用いた場合の医療用RI生成核反応断面積を系統的に測定する。このような系統的な実験の結果を用いることにより、不要なRI生成を抑えつつ、目的とする医療用RIの生成効率を最大化するような反応及びエネルギーを調べることが可能となる。 実験手法としては、医療用RI生成断面積の取得実験で一般的に利用されている手法である、放射化法、積層箔法、γ線分光法を用いた。本年度は、理化学研究所AVFサイクロトロンで24MeVに加速した重陽子及び50MeVに加速したα粒子を用い、93Nb, 89Y, natZn, 159Tb標的への重陽子入射反応、natEr, Tm, Ni, W標的へのα粒子入射反応実験を行った。それぞれの反応から得られる医療用RI(68Ge, 89Zr, 177Lu, 188Re等)の生成断面積を測定した。測定結果の解析を進め、結果が得られた実験から学術論文等として順次発表している。 その結果、昨年度本事業で実施した実験と併せ、natZr標的へのα粒子入射反応による99Mo生成、93Nb標的への重陽子入射反応による93mMo生成、natAg標的へのα粒子入射反応による111In生成、natZn標的へのα粒子入射反応による68Ge生成、計4編の論文が学術雑誌に掲載された。
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