研究実績の概要 |
放射性同位元素(RI)は様々な分野で利用されており、医学分野においてはがんの診断や治療などに利用されている。医療用RIの生成に重要な核反応断面積について、欠落しているデータ及び精度向上が必要なデータを系統的に測定することで、医療分野へ貢献する。特に、入手が容易な自然存在比の金属箔を標的とし、陽子、重陽子及びアルファ粒子などの荷電粒子を入射粒子として用いた場合の医療用RI生成核反応断面積を系統的に測定する。このような系統的な実験の結果を用いることにより、不要なRI生成を抑えつつ、目的とする医療用RIの生成効率を最大化するような反応及びエネルギーを調べることが可能となる。 実験手法としては、医療用RI生成断面積の取得実験で一般的に利用されている手法である、放射化法、積層箔法、ガンマ線分光法を用いた。本年度は、理化学研究所及びハンガリー原子核研究所で、ツリウム、クロム、バナジウム標的への陽子入射反応、スカンジウム標的への重陽子入射反応、ガドリニウム、ディスプロシウム、ネオジム標的へのアルファ粒子入射反応実験を行い、それぞれの反応から得られる医療用RI(166Ho, 43Sc, 169Yb等)の生成断面積を測定した。測定結果の解析を進め、結果が得られた実験から学術論文等として順次発表している。 その結果、昨年度本事業で実施した実験で得られた結果を含め、ツリウムへの陽子入射反応、亜鉛、テルビウムへの重陽子入射反応、エルビウム、イットリウム、イッテルビウム、ニッケル、パラジウムへのアルファ粒子入射反応の実験結果に関する計8編の論文が査読付き学術雑誌に掲載された。
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