研究課題/領域番号 |
17K07005
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
相楽 洋 東京工業大学, 科学技術創生研究院, 准教授 (60401519)
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研究分担者 |
片渕 竜也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40312798)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炉物理・核データ / 非破壊測定 / 核セキュリティ / 核不拡散 |
研究実績の概要 |
今後の核不拡散・核セキュリティ技術開発には、これまでの原子力技術や放射線利用からのニーズとは全く異なる核反応や精度ニーズが存在する。本研究は核物質の検知・測定技術である非破壊測定技術について、その鍵である核物質からの直接・間接放射線放出に係る核データに焦点を当て、①非破壊測定技術に重要な核種と反応の調査、②核データ収集・NDA性能解析、③核不拡散・核セキュリティ技術開発に重要で高付加価値の核データ測定精度ニーズリストの作成を目的とした。 平成29年度は、パッシブ法について調査を開始した。一例として、照射済燃料の燃焼度測定等に用いられるガンマスペクトロメトリ法に重要な154Euの軽水炉内生成パスは、(1) Fission→153Eu(n,g)→154Eu、(2) Fission→154Euの主に2系統である。特に核データ整備が不足している(2)パスについて235Uからの核分裂収率が極めて小さくウラン燃料中での寄与は極めて小さいが、MOX燃料では239Puからの累積核分裂収率の寄与が無視できないことを明らかにした。 また、他のパッシブ法として、全中性子計測法、全ガンマ計測法、ガンマスペクトロメトリ法、ガンマ・中性子トモグラフィ法、中性子自己問いかけ法、Differential Die-Away法、Multiplicity法等を検討し、測定原理に重要な核反応の調査、およびその核データの調査を開始した。 また、非破壊測定に重要な核反応と核データ優先順位を定量的に定めるためのワークステーションやコード整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、パッシブ法について調査を開始した。一例として、照射済燃料の燃焼度測定等に元いられるガンマスペクトロメトリ法に重要な154Euの軽水炉内生成パスは、(1) Fission→153Eu(n,g)→154Eu、(2) Fission→154Euの主に2系統である。特に核データ整備が不足している(2)パスについて235Uからの核分裂収率が極めて小さくウラン燃料中での寄与は極めて小さいが、MOX燃料(5%Pu富化度)では239Puからの累積核分裂収率(不確かさ60%(1σ))の寄与が無視できず40GWd/t燃焼度で154Eu蓄積に対する実効不確かさが約9%、燃焼初期では更に大きくなることを明らかにした。
また、他のパッシブ法として、全中性子計測法、全ガンマ計測法、ガンマスペクトロメトリ法、ガンマ・中性子トモグラフィ法、中性子自己問いかけ法、Differential Die-Away法、Multiplicity法等を検討し、測定原理に重要な核反応の調査、およびその核データの調査を開始した。
研究成果は、原子力学会2017年秋の大会において核データを専門とした「シグマ」特別専門委員会企画セッションで招待講演を行い、2018年春の年次大会において核不拡散・核セキュリティ専門家を対象とした技術セッションにおいて報告を行った。本研究が狙いとしている、核セキュリティと核データ分野をまたいだ新たな研究分野での議論を開始し、最終的な核データ特種目的ファイル構築に重要なコミュニティ構築を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)非破壊測定技術の調査及び核データの観点からの評価 平成30年度は、アクティブ法の調査を行う。対象として、外部中性子・光子透過トモグラフィ法、中性子問いかけ法、誘発核分裂ガンマ線測定法、遅発ガンマ線測定法、中性子共鳴分析を利用した手法、X線蛍光発光法、光核反応を利用した手法等を検討し、測定原理に重要な核反応の調査を行う。また、年度後半より、(2)で実施するアクティブ法に重要な核データ不確かさの調査結果を基に、それが非破壊測定手法に与える影響評価として粒子輸送解析コードMCNP6を用いた核データ感度解析を実施し、平成30年度中にまとめる。 (2)核データ収集・解析 平成30年度は、(1)で実施したパッシブ法の調査結果に基づき核データ収集・解析を行いまとめる。また、年度後半より、(1)で実施したアクティブ法の調査結果に基づき核データ収集・解析を実施する。特に光核反応や遅発ガンマ線等の関連核データの整備が殊更不十分であることが予想され、(1)の非破壊測定技術への核データ感度評価の結果と連携しながら平成30年度までにまとめる。 (3)総合評価 (1)、(2)の結果より、それぞれの非破壊測定手法の核不拡散・核セキュリティにおける位置づけ(研究段階、実証段階、運用段階)を分類し、非破壊測定に重要な核反応及びそれに高い感度を有するエネルギー領域における核データの整備情報をまとめ、今後の核不拡散・核セキュリティ技術開発に重要で高付加価値の核データファイル(JENDL核不拡散・核セキュリティ特殊目的ファイル)の基盤を構築する。また、核不拡散・核セキュリティのための非破壊測定手法技術開発に必要な核データ測定の優先順位付けを体系的に行い、今後の核データ測定データを含めた本特殊目的ファイル構築の工程を策定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度から学生RAの雇用を予定していたが、適任が見つけることができず、人件費の余剰が出た。平成30年度からは学生RA雇用を開始し、核データの調査の補助、非破壊測定手法に重要な核反応の感度解析補助を実施してもらい、本データをさらに拡充する予定である。
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