研究課題/領域番号 |
17K07009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
沈 秀中 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (20362410)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱流動 / ロッドバンドル流路 / 気液二相流 / 気相拡散 / 界面積濃度輸送方程式 / 気液二相流計測 / データベース構築 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
ロッドバンドル内複雑な気液二相流の流動特性と気泡移動拡散挙動を予測可能なモデルを開発する目的を実現するために、平成29年度は以下の実験と理論研究を実施した。 (1)既存の6×6ロッドバンドル実験装置を改造し、次のような特徴を持つようになった。(a)新しく製作した気相の導入を制御する気液混合器を実験装置への装着により、試験部に7通りの気相導入と液相入口効果の最小化が可能になった。(b)ロッドバンドルのスペーサによる圧力損失の急変化に対応できるように差圧計測系統を改良し、広範囲の気液二相流の局所圧力損失の計測ができるようになった。(c)2と4本光ファイバーで構成するダブルセンサー・プローブと4センサー・プローブの計測系統を整備・改良した。(2)差圧計の計測実験を行い、流れ方向の平均ボイド率と圧力損失のデータベースを構築した。(3)試験部の一個所において、ダブルセンサー・プローブを用いた実験を実施し、ボイド率、界面積濃度などのデータベースを構築した。(4)試験部の一個所において、4センサー・プローブを用いた実験を実施し、ボイド率、界面積濃度、気泡速度、気泡径などの流動特性値データを取得した。(5)本実験のデータと既存の他の研究者の実験データとの比較と分析により、ロッドバンドル内気液二相流の圧力損失とその予測相関式を総合的に検討した。(6)ロッドバンドル内気液二相流のボイド率分布と気泡拡散現象に対して解析を行い、その結果を既存のドリフトフラックスモデルのボイド率予測結果と比較し、既存のドリフトフラックスモデルの問題点を明らかにした。(7)ロッドバンドル内気液二相流の界面積濃度輸送方程式開発のため、既存の界面積濃度輸送方程式及び気泡合一・分裂モデルをレビューし、それらのモデルの妥当性評価を行った。(8)本年度の研究成果は国内外学術講演会で発表し、国際学術ジャーナルにも投稿・発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた、気相の導入を制御する気液混合器をロッドバンドル実験装置に装着する改造、差圧計測系統の性能拡充、多センサー・プローブ計測系統の整備・改良ならびにロッドバンドル内空気ー水気液二相流におけるボイド率、界面積濃度、気泡速度、気泡径、圧力損失などの測定を実施し、データベースを構築した。さらに、流動様式と実験データの解析により、ロッドバンドル内気液二相流の流動特性と気泡移動拡散挙動を総合的に検討するとともに、その気泡拡散を含む一部の特性と現象が既存のドリフトフラックスモデルで予測できないことを明らかにした。また、ロッドバンドル内気液二相流の界面積濃度輸送方程式開発のため、既存の界面積濃度輸送方程式及び気泡合一・分裂モデルをレビューし、それらのモデルの妥当性評価を行った。以上のように、本年度の成果は、当初計画をほぼ全て完了しており、それ以外の成果も得られいることから、概ね順調に進展したものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり成果が順調に得られており、次年度も当初計画に沿って多センサー・プローブ計測系統の増設、気相非均一導入の流動条件でのロッドバンドル内気液二相流の局所計測実施、広流動範囲のデータベースの構築、気相拡散機構と界面積濃度輸送機構の解明ならびに入口条件を考慮したドリフトフラックスモデル・乱流誘起気泡衝突力モデル・界面積濃度輸送方程式の開発研究を進展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ロッドバンドル内気液二相流の局所計測に必要な4センサー・プローブ用計測アンプの部品と画像撮影用照明装置を新規に購入する予定だったが、現有の部品の再利用により購入の必要がなくなり、次年度の一部使用額が生じた。更に、実験実施の効率化により今年度の実験補助者の補助を利用しなかったことで、予定した人件費・謝金は次年度の使用額になった。 生じた次年度使用額は、実験の増設予定の多センサー・プローブとその計測アンプの新部品購入費、実験装置とその計測系統の維持費等に充てるとともに、実験結果記録用媒体の購入費と複数プローブ同時計測実験の補助者への謝金として使用する予定である。一方、データ解析とモデル開発においては、国内外研究調査及び困難が生じた時海外研究協力者の援助を得るための招聘打合せを予定している。また、得られた研究成果を学会等にて発表するための出張旅費と参加費として使用することも考えている。
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