研究課題/領域番号 |
17K07011
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 俊弘 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (70355048)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中性子 / 炉雑音 / 原子炉 / 輸送理論 / モンテカルロ法 / 周波数領域 |
研究実績の概要 |
報告者は、欧州委員会の炉雑音研究プロジェクトCORTEXに参画し、この一環として炉心内の燃料の振動等によって発生する中性子雑音の輸送伝播挙動を周波数領域で解析するモンテカルロ計算手法の開発を行ってきた。 開発手法の妥当性を検証するため、ドレスデン工科大学の臨界装置AKR-2炉で行われている炉雑音実験の解析を実施したが、実験データの取得が装置の不具合やCOVID-19の影響により遅れており、本格的な比較検討は令和3年度に持ち越すこととなった。 当初研究実施計画に挙げられていた実機発電炉での炉雑音解析については、モンテカルロ手法では非常に誤差が大きく統計的に有意な結果を得ることが困難であることが明らかとなった。そこで、モンテカルロ手法を直接発電炉の解析に用いるのではなく、まず、単純モデル体系において決定論的手法の精度確認をモンテカルロ法との比較により行い、そして、本格的な発電炉での解析はモンテカルロ手法によって精度の確認された決定論的手法で行うことが合理的であるとの結論に至った。この目的のため、CORTEXプロジェクトでは、モンテカルロ法を含む複数の解析手法の比較検討を行い、決定論的手法の解析精度が同定された。 スイス連邦工科大学の臨界装置CROCUSで行われた炉雑音による原子炉内でのボイド移動速度測定実験の解析を、本研究で開発しているモンテカルロ手法を用いて行い、炉雑音手法によるボイド速度の測定特性の検討を行った。この結果によれば、高周波側の雑音では、実際のボイド移動速度を精度よく測定できるが、低周波側の雑音はボイド伝播がより広範囲に及び、これが原因でボイド移動速度を過大評価することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究での開発手法の比較検討のためのドレスデン工科大学のAKR-2炉での炉雑音実験が、装置の不具合やCOVID-19による人の移動制限のため遅延している。 本研究で採用しているモンテカルロ手法では、炉内の燃料異常振動などの現象は、正と負の値の中性子雑音が相殺しあい、統計的に有意な結果を得るためには膨大な計算時間を要することが判明した。このため代替手段として、炉雑音解析には決定論的手法を用いることとし、その検証手段としてモンテカルロ法を用いるという方法が適切である。その精度確認のための相互比較の解析を行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
ドレスデン工科大学のAKR-2炉及びスイス連邦工科大学のCROCUS炉からの実験データが利用可能となり次第、本研究で開発している計算手法による実験解析を実施し、解析手法の妥当性を検証する。 CORTEXプロジェクトでは、モンテカルロ法を含む複数の解析手法の比較検討が行われているが、これまではごく単純な体系のみであった。より実機発電炉に近い複雑な体系についての比較検討を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
欧州で開催が予定されていた会合に出席予定であったが中止となりオンラインで実施されたため、旅費が不要となった。次年度は、論文投稿の費用として使用する予定である。
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