東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所の事故によって、炉心燃料の一部が溶融し、燃料デブリとなって原子炉圧力容器または原子炉格納容器下部に存在していると思われる。当該施設の廃止措置において、燃料デブリ中に含まれる核燃料物質を検認し、適切な計量管理を行うための核燃料物質の非破壊分析手法の開発は必要な課題である。 そこで、本研究では核燃料物質を迅速且つ簡便に定量する技術開発を目的として、Self-indication法の適用を検討した。Self-indication法とは、被検体に十分コリメートされたパルス中性子ビームを照射し、被検体下流側に配置した測定対象核種から成るindicatorからの反応生成物を中性子飛行時間法(TOF法)で測定することにより、被検体中の測定対象核種による共鳴吸収量の変化から核種濃度を決定する手法である。 本研究では、京都大学複合原子力科学研究所のライナック施設のパルス中性子源を用いて、Self-indication法の核種非破壊分析法の検証実験を行った。実験は高濃縮ウランをindicatorとしたU-235からの核分裂生成物の測定と、天然ウランをindicatorとしたU-238からの中性子捕獲ガンマ線の測定を行ったところ、どちらの測定においても、被検体中に含まれる対象核種濃度に応じた中性子共鳴吸収による計数率の変化を観測できた。 一方、モンテカルロシミュレーションコードによる数値計算によって、適切な厚さのフィルターを通した白色中性子ビームを用いれば、TOF情報を用いることなく全計数率の変化量からも核燃料物質の含有濃度を推定できる可能性があることを示唆する結果を得ると共に、中性子イメージングの実験においても、Self-indication法の原理を適用することによってTOF情報を使わずに核種識別が可能であることを示した。
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