研究課題/領域番号 |
17K07017
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (00370403)
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研究分担者 |
真辺 健太郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (60414520)
佐藤 薫 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (80354702)
古田 琢哉 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (40604575)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 外部被ばく線量評価 / 放射線輸送計算 / 放射性核種 / 環境 / 放射性雲 / 眼球模型 / 人体数値模型 |
研究実績の概要 |
本研究は、生活環境への放射性核種の流出に対して公衆の外部被ばくと内部被ばく線量を算出する統合線量評価システムの開発を目的としている。本年度(平成29年度)は、人体を詳細に記述した数値模型を開発し、外部被ばくによる各臓器の線量を放射線輸送計算コードPHITSを用いて解析した。 まず、外部被ばく線量評価で重要となる詳細な眼球模型を開発した。眼球は非常に複雑な構造を有しているため、従来の模型では放射線感度が高く障害を発生しやすい部位とそれ以外の部位を判別することが不可能であった。開発した眼球模型では、最新の解剖学的データに基づき角膜、水晶体、網膜、強膜、視神経等の領域を定義することで部位毎の線量評価を可能とした。当初計画では全身の詳細模型もポリゴン技術を応用して開発する予定だったが、同様の開発を行った韓国Hanyang大学のグループより模型の提供がなされたため、それらを採用することとした。また、人体数値模型を連続する四面体形状を用いてPHITSに取り込み高効率で放射線輸送計算を実施する手法を開発した。 次に、放射性核種の大気放出の初期に観測される放射性雲(プルーム)からの外部被ばく線量を評価するため、地表面から高度1000mの範囲で大気に存在する単位放射能の放射性核種による地表面での線量寄与を解析し応答関数データベースを構築した。この応答関数データベースを利用して、任意の形状で大気に分布する放射性雲からの外部被ばく線量の評価が可能となった。また、流出後に放射性核種が大気、水、または土壌に一様分布した環境中での放射線輸送計算の手法を開発しPHITSに組み込むことで、公衆を代表する各年齢の外部被ばくによる臓器線量と実効線量を評価した。さらに、土壌に存在する核種に対しては、任意の深度分布からの外部被ばく線量を解析する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
韓国Hanyang大学のグループより全身の人体数値模型の提供を受けたことで、本課題で新たに同様の模型を開発する必要がなくなった。この模型を採用して、放射線輸送計算コードPHITSにおいて連続四面体を用いた幾何形状の構築手法と輸送計算の高速化手法の開発に成功することができた。眼球模型も、先行研究を実施していた米国Florida大学のグループの協力により解剖学的に正確な模型を開発することができた。外部被ばく線量の評価においても、これまでに培った放射線輸送計算に関する知識と本年度に購入した並列計算機を用いて実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施した外部被ばく線量評価のデータに対して多方面から検証を継続する。必要な場合は、適切な手法にてデータを修正する。また、内部被ばく線量の評価手法を開発する。検討は既に初めており、計画通りに進められる見通しを得ている。最終年度の統合線量評価システムの開発を見越して、外部及び内部被ばく線量評価プログラムは円滑に統合されるよう設計する。システムのインターフェース設計では、専門家以外の使用も想定して広く意見を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では、国際放射線防護委員会が提供する微小立方体素子で記述された人体数値模型からポリゴンで記述した人体数値模型を作成する予定であったが、同様の開発を実施した韓国Hanyang大学のグループから模型の提供がなされた。よって、その開発のために計上したコンピュータグラフィックス用ワークステーションの購入が見送られた。次年度以降では、本年度開発した眼球模型を全身模型に組み込むために、同様の性能のワークステーションを購入する計画である。
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