研究課題/領域番号 |
17K07018
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岡根 哲夫 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究主幹 (10391278)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 福島第一原子力発電所事故 / 放射性微粒子 / 硬X線光電子分光 / 2次元イメージング / 化学形・化学的性状 |
研究実績の概要 |
環境中のセシウム吸着物の模擬試料として、セシウムを飽和吸着した風化黒雲母試料とこれに脱離処理を施した試料に対して、SPring-8の原子力機構専用ビームラインBL22XUにおいて硬X線光電子分光(HAXPES)実験を実施した。これにより、風化黒雲母中においてセシウムが脱離しやすいサイトと脱離しにくいサイトではセシウムの電子状態に違いがあることを明らかにし、風化黒雲母に吸着されたセシウムが脱離されにくい理由について化学結合の観点から重要な知見を得ることに成功した。以上に実験結果を日本原子力学会 2017年秋の大会において口頭発表した。 また、2次元イメージングHAXPESシステム整備の一環として、2軸ピエゾ駆動ステージを購入して試料位置精密駆動システムの整備と性能評価試験を実施し、所定の駆動精度が出ていることを確認した。大型放射光施設SPring-8の原子力機構ビームラインBL22XUにおいて、集光光学系、試料位置精密駆動システム、及び光電子分光装置を連動させた2次元イメージングHAXPESの試験測定を実施し、空間分解能、エネルギー分解能等を評価して、所定の性能が出ていることを確認した。 整備したシステムを用いて、1F周辺環境で採取された放射性微粒子に対する2次元イメージングHAXPESのテスト実験を行なった。今回測定した試料は200μm程度の比較的大きいサイズの放射性セシウム含有微粒子である。放射光X線の試料位置でのスポットサイズを2μm程度まで絞ることによって3~5μm程度の空間分解能でのHAXPESスペクトルを放射性微粒子について取得することに成功した。微粒子に含まれるセシウムのシグナルを捉えることにも成功し、次年度以降の実験に向けて有益な試験データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画としてH29年度の内容に予定していた通り、試料位置精密駆動システムの整備・テスト実験と大型放射光施設SPring-8の原子力機構ビームラインBL22XUにおいて集光光学系、試料位置精密駆動システム、及び光電子分光装置を連動させた2次元イメージングHAXPESの試験測定を遂行し、所定の結果を得ることに成功した。 H30年度に予定している内容の前倒しとして、1F周辺環境で採取された放射性微粒子試料の中で比較的大きいサイズ(数百μm~数十μm程度)の微粒子試料に対する2次元イメージングHAXPESの試験測定も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に実施した試験測定から、1F周辺環境で採取された放射性微粒子試料のセシウム含有量自体は大きくないので、得られるセシウムのシグナルは小さく、空間分解してピンポイントでセシウムが濃く集積している場所を捉える実験技術が非常に重要であることを認識した。そこで、放射光実験に先立っての試料の顕微鏡での確認、視認用マーカーの設置等の事前準備を入念に行い、放射光実験を効率良く進める実験計画を立てたい。また、H29年度に実施した試験測定から、セシウムの電子状態が吸着部位によって異なっている可能性があることが示唆されているので、スペクトル形状解析から成分分離ができるように十分な統計精度での測定が実施できる実験条件を探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ピエゾステージコントローラの購入において、当初想定していた額より購入額を抑えることができたため差額が次年度使用額として生じることとなった。 これについては、平成30年度に予定している放射性微粒子に対する2次元イメージングHAXPESに係る消耗品の購入費用として使用する。
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