研究実績の概要 |
2次元イメージングHAXPES装置を用いて、福島第一原子力発電所(1F)周辺環境から採取した放射性微粒子のうち、Type-Bと呼ばれる放射性微粒子について、粒子内生成物の化学形評価実験を実施した。1F由来の放射性粒子はType-A(2, 3号機由来)とType-B(1号機由来)に大別される。Type-BはType-Aとは異なり、大きさが数百μmと大きく、不定形であり、元素分布は不均一である。そのため、両者は生成過程や生成環境も異なると考えられるので、Type-B粒子とType-A粒子の化学状態分析結果の比較により、事故時の1号機と2, 3号機の炉内状況の違いを推測するための強力なデータが得られると考えられる。そこで今年度の実験ではType-B粒子の電子状態を、放射性微粒子の原料の候補であるガラスウール、ケイ酸ガラス、鉛ガラス等の電子状態と比較しながら、Type-Bの放射性粒子の生成過程を解明を試みた。 放射性粒子は、福島第一原子力発電所から北北西に2km地点にある工場敷地内のダスト試料から取り出したType-Bの放射性粒子2個を断面加工し、母材部分や重元素部分について、SEM-EDS分析をした。また大型放射光施設SPring-8 BL22XUにて、硬X線光電子分光(HAXPES)を行い、放射性粒子表面の元素の化学状態を分析した。その結果、1)粒子の母体はガラスウールに近い化学形を持つこと、2)粒子内のCsの化学形は、2種類存在すること、3)Siの化学状態も2種類ありCsの化学形と相関を持つことなどを明らかにした。 これらの結果について、現在論文作成を進めている。
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