研究課題
放射線と物質の相互作用研究において、Particle and Heavy Ion Transport code System(PHITS)のような汎用放射線輸送計算コードは、マクロな複雑体系における線量評価と共に、ナノスケールの微視的空間内で誘発される放射線作用研究への適用も期待されている。これは、放射線作用自体が物質のミクロな物理現象であるにも関わらず、その主体となる低エネルギー電子の放射線作用が未解明要素を多く含むためである。本研究では、PHITSの飛跡構造解析モードを開発し、微視的複雑体系における放射線作用を計算可能にする。その計算機能を利用し、これまで計算が困難であった低エネルギー電子が作用するDNAの複雑損傷機構解明を目指す。更に、陽子・炭素イオンの飛跡構造解析モードも開発し、本計算機能の波及効果を狙う。令和元年度は、PHTISの電子飛跡構造解析モードを利用したDNA損傷モデリングを拡張し、シミュレーション結果と実験結果と比較することで検証した。本研究による結果は、DNA照射実験における様々な種類のDNA損傷収量を評価することが可能であることを示した。本研究で目指したイオン飛跡構造解析モードの開発も完了し、PHITS ver3.20において一般公開するに至った。これにより、多くのユーザーが利用可能になったことで、本研究で目指したイオントラックコアによる微視的複雑体系の放射線作用解明が飛躍的に進展することが期待される。
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