太陽光/風力発電の大量導入時における電力安定供給の実現は喫緊の課題であり,火力発電には高効率のみならず電力需給ギャップの調整電源としての高い負荷追従能力が求められている。本研究で対象とする希ガスMHD発電機は,機械的可動(回転)部をもたず作動気体のエネルギーを直接電気エネルギーに変換することから,既存の火力タービン発電機とは異次元の負荷追従能力を発揮する可能性がある。本研究では,電磁流体解析技術を駆使して,希ガスMHD発電機の高速負荷追従能力を定量的に把握するとともに,再生可能エネルギー電源大量導入時の数秒周期の激しい負荷変動への希ガスMHD発電機の追従可能性を見極めることを目的としている。
今年度は,電力系統に接続された熱入力1000MW級の商用規模(2000℃級の高温希ガスを利用)非平衡MHD発電機の時間応答特性と系統接続回路条件の関係を電磁流体解析と電力系統の連成解析からより詳細に調べた。その結果,発電機と自励式インバータの間に並列接続する平滑コンデンサーの静電容量を小容量に設定した場合,系統へ送られる電力のみならず発電機内のプラズマ電磁流体諸量も大きく動揺することがわかった。また,発電機の出力調整を端子電圧制御のみで行う場合,インバータが過変調になりやすく,幅の広い出力調整を安定に行うことが難しいことがわかった。従って,前年度までに示されているように,幅の広い出力調整を行うには,MHD発電機内のプラズマの内部抵抗を決めるシード率を制御(指令端子電圧値は一定)することが望ましい。さらに,インバータにより行われる発電機の端子電圧制御・系統に送られる無効電力の制御に対して設定される各種ゲイン設定(PI制御)により,ここで設定した発電システムの応答時間が大きく左右されることを確認した。
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