研究実績の概要 |
本研究は,下限臨界溶液温度を境に親水性と疎水性がスイッチする感温性高分子ゲルの利用により,60 ℃以下での低温再生ならびに狭い温度スイング幅での大容量除湿を可能とするデシカント調湿システムの構築を目指した。 3年間の研究期間を通して,デシカント調湿用感温性高分子ゲルの調製および水蒸気吸着平衡特性の把握・改善に取り組んだ。具体的には,N-イソプロピルアクリルアミド,メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル,N-イソプロピルメタクリルアミドを主量体,N,N’-メチレンビスアクリルアミドを架橋剤とし,さまざまな重合条件で感温性高分子ゲルの調製を行った。さらに,容量法,飽和塩法を用いて調製高分子ゲルの水蒸気吸着平衡特性を測定した。この結果,感温性高分子ゲルは水蒸気吸着に対しても感温性を示すものの,水相中での感温性に比べて弱いことが明らかになった。また,親水性基の増大に伴い水蒸気吸着平衡量は増大するものの,感温性が弱まる傾向が認められたことから,デシカント調湿システムの作動条件に対応した有効水蒸気吸着量を最大化する調製条件を決定する必要性が指摘された。 また,令和元年度には,前述の感温性高分子ゲルおよび汎用吸着材であるシリカゲルについて,本研究で構築した試験装置により,空気流速,再生温度などをパラメータとした水蒸気吸・脱着速度の測定を行った。この結果,脱着率80 %以下では感温性高分子ゲルとシリカゲルの脱着速度はほぼ同等であったが,感温性高分子ゲルの吸着速度は遅く,実用化に向けては,特に吸着速度向上の必要性が指摘された。また,実験結果と数値解析結果の比較により,吸・脱着速度定数が決定された。 以上の検討により,感温性高分子ゲルの水蒸気吸・脱着についての平衡論,速度論的な知見・基礎データが蓄積され,感温性高分子ゲルを利用したデシカント調湿システムの設計が可能になった。
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