本研究は,土壌の熱のみならず積極的に地下水を利用するヒートクラスター型(井戸型)地中熱ヒートポンプの地中内の熱移動に関する解明を目的としている.地下水の井戸への流出入を含む地中内の熱移動は極めて複雑であるため,地中を模擬した実験装置を製作し詳細な熱移動の測定を行なうほか,数値計算によるモデル化を行い現象の解明を試みるものである. これまでの研究において,レイノルズ数やプラントル数,ダルシー数などの無次元数を考慮した相似条件を満足するダウンスケールの実験装置の作製を行なった.局所での流れの可視化が可能となるように改良を加えたほか,温度計測を行なえるように熱電対ならびにデータロガーを設置した.その結果,井戸内への地下水の流出入の詳細な可視化や温度計測が可能となり,最終年度では複雑な流動をともなう熱移動現象の数値計算モデル化の開発に結びつけることができた.このモデル化により複雑な地中内の熱移動現象に関する多くの知見を得た.また,本校敷地内に建設した未来型エネルギーハウス(実験ハウス)にヒートクラスター型地中熱ヒートポンプを設置している.様々な負荷パターンによるデータを定常的に取得しており,数値計算のモデル化を行なう際の重要な基礎データとなっておりモデルの改良を引き続き進めている. 本モデル化であるが,汎用のシミュレーションコードを用いてその検証を行なっているほか,最終年度においてGPUによる並列化が概ね終了したため,大規模計算による検証を引き続き行っている.
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