研究課題
福島原発事故以来、再生可能エネルギーへの期待が一層高まり、安全・安心な太陽光発電が注目されている。将来の普及拡大に向けた課題は、資源的制約の無い、低コストな太陽電池を開発することである。本研究では、稀少元素のInやGaを含まず、資源上の制約が少なく、原材料費が安価であるという利点を持っている、次世代型のカルコゲナイド薄膜太陽電池の性能向上を目指して、成膜技術を検討することを目的とする。CZTSSe薄膜太陽電池については、本研究の初年度に見出した新たな結晶化プロセス3S法を用いて、CZTSSe薄膜や太陽電池の作製条件を検討した。プリカーサ蒸着時の基板温度は500℃が適していたので、今年度は、基板をEAGLEガラスに変更することで、より高い結晶化温度(650℃程度まで)でのCZTSSe薄膜の作製を行った。また、EAGLEガラスには含まれていないアルカリ金属の添加方法についても検討した。その結果、NaFを1段目に、KFを3段目に投入する改良型3S法を用いることで、開放電圧は硫化温度の上昇につれ増加し、硫化温度650℃で従来値を更新する、世界トップクラスの720mVが得られた。Cu2SnS3やAgドープCu2SnS3薄膜太陽電池についても、硫化温度の高温化を制限していたソーダライムガラス基板からEAGLEガラス基板に変更し、硫化温度の高温化を検討した。その結果、Cu2SnS3では硫化温度620℃、NaFを15%添加の太陽電池で、開放電圧274mVの高い値が得られた。さらに、AgドープしたCu2SnS3では、硫化温度650 ℃、NaF添加10%の太陽電池で、開放電圧302mVが得られ、世界初の300mV越えの成果を達成した。研究期間全体を通じて、新規な成膜技術を開発し、硫化温度の高温化とアルカリ金属の添加技術により、次世代型のカルコゲナイド薄膜太陽電池の性能向上を達成できた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Japanese Journal of Applied Physics
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https://researchmap.jp/read0195275