研究課題
近年、様々な精神疾患の遺伝子関連解析により、多数のリスク遺伝子が同定され、発症機構の遺伝的要因の解明に重要な手がかりが得られつつある。本研究では、ヒト精神疾患の重要な遺伝子であるDISC1を手掛かりとして、ショウジョウバエ遺伝学を使用して疾患リスク遺伝子相互作用の解析を推進してきた。今年度は、RNA結合タンパクをコードし、多数のシナプス遺伝子の発現を制御することが知られているFMR1について、DISC1との遺伝的相互作用の検討を進めた。我々は、これまでにDISC1過剰発現によりFMR1変異体が示す前シナプス終末異常が部分的に抑制されることを明らかにしてきた。また、DISC1強制発現が、野生型のシナプス総面積を減少させるのに対し、FMR1変異体では、DISC1強制発現によってもシナプス総面積は変化せずに、代わってシナプス総数が有意に減少することを明らかにしてきた。これらのシナプス形態の変化を基礎に、様々なFMR1標的因子について、シナプス形成過程に於けるタンパク質発現レベルと局在の変化を、免疫組織学的手法と分子生物学的手法により体系的に解析し、DISC1により誘起されるシナプス細胞の分子応答が、FMR1の活性レベルによりどのように修飾されるか検討した。その結果、ショウジョウバエFMR1遺伝子の変異体で、DISC1過剰発現が前シナプス活性部位の密度を有意に増加させることが示された。加えて、DISC1過剰発現が後シナプスにおけるグルタミン酸受容体DGLURⅡAと微小管結合タンパク質FUTSCHの発現レベルをFMR1と強調して制御することが示された。生化学的解析により明らかにされたDISC1結合タンパクの多くがFMR1標的因子と重複しており、我々の結果は、両遺伝子がシナプス形成過程において分子レベルで相互作用していることを支持している。
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http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~tokunaga/Furukubo-Tokunaga_Lab/Preface.html