研究課題/領域番号 |
17K07043
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋本谷 祐輝 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (50401906)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 海馬 / 乳頭体上核 / 歯状回 / 顆粒細胞 / 光遺伝学 / 神経回路 / シナプス / 共放出 |
研究実績の概要 |
海馬は記憶・学習に不可欠な脳領域である。視床下部に位置する乳頭体上核は海馬のCA2と歯状回へ投射しており、海馬シータ波の活動を調節することが知られている。さらに最近、この投射が睡眠に関わることも示唆された。しかし、これまで、乳頭体上核が海馬のどういった種類のニューロンとシナプスを形成して海馬ニューロンの興奮を調節しているのかに関して、ほとんど詳しく調べられてこなかった。本研究では乳頭体上核ー海馬シナプスの結合様式を神経回路レベルで明らかにすることを目的とする。
平成30年度は昨年度に引き続き、アデノ随伴ウィルスを使ってチャネルロドプシン-2を乳頭体上核に発現させ、急性海馬スライス標本から電気生理学的解析を行った。本年度は興奮性ニューロンでCreが特異的に発現するVGluT2-Creマウスを用いて、乳頭体上核ニューロンの興奮性ニューロン選択的にチャネルロドプシン-2を発現させた。このマウスを使って昨年度同様に海馬顆粒細胞からホールセルパッチクランプを行い、LEDによる青色波長の光照射を行った。その結果、興奮性のシナプス応答だけでなく抑制性のシナプス応答も記録された。つぎに抑制性ニューロンでCreを特異的に発現するVGAT-Creマウスを用いて、乳頭体上核ニューロンの抑制性ニューロン選択的にチャネルロドプシン-2を発現させた。この場合でも、顆粒細胞からシナプス応答を記録した際に、興奮性と抑制性両方のシナプス応答が記録された。同様の結果が歯状回の抑制性ニューロンから記録した場合でも得られた。以上の結果から乳頭体上核ニューロンから歯状回の顆粒細胞と抑制性ニューロンに投射するシナプスにおいてグルタミン酸とGABAが共放出することが明らかになった。以上の内容を含む論文を発表した(Hashimotodani et al, Cell Rep, 2018)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は乳頭体上核と海馬ニューロンのシナプスにおいてグルタミン酸とGABAが共放出すること明らかにした。これらの内容を含む論文を学術誌に発表することができた。 以上のことから本年度はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で明らかにした乳頭体上核ー海馬間シナプスにおけるグルタミン酸とGABAの共放出に関して、海馬情報処理における役割をさらに調べていく予定である。興奮と抑制という両極端の効果がシナプス後細胞に与える効果を調べるとともに片方の入力を遮断した場合にどのような変化が引き起こされるのか明らかにする。さらにマウスへのなんらかの環境負荷によって共放出比に変化を生じるような可塑性が発揮されるのかどうか検討する予定である。
|