研究課題/領域番号 |
17K07044
|
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
古泉 博之 奥羽大学, 薬学部, 准教授 (10334335)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 発達障害 / 衝動性 / 神経回路 / ドーパミン神経系 / セロトニン神経系 / 軸索伸長 |
研究実績の概要 |
Dclk1およびDclk2は、脳神経回路の形成において神経細胞の軸索や樹状突起の形成において機能する。Dclk1およびDclk2は、ADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害と関連することが報告され、一方、我々はこれまでに、Dclk1/Dclk2ダブル欠損マウスは網羅的な行動解析の結果、ADHDの症状の一つである衝動性の亢進(断崖回避テストにおいて台からの飛び降り行動の頻度が増加)を示すことを明らかにしている。また、ダブル欠損マウスは、野生型マウスと比較し、前頭前皮質におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経線維が減少しており、ドーパミン神経細胞の前頭前皮質への投射の減少が示唆された。そこでドーパミン神経系の機能に異常があるかを調べるために、本年度は、ドーパミンなどのモノアミンおよびその代謝物の脳各部位(前頭前皮質、側坐核、線条体、海馬)における量をHPLCにより測定した。5~7ヶ月齢の野生型(雄10匹、雌6匹)およびダブル欠損マウス(雄3匹、雌3匹)を用いて測定を行った。その結果、有意差の見られたものとして、①線条体(吻側)におけるドーパミン量の増加、②前頭前皮質におけるドーパミンに対するドーパミン代謝産物のモル比(DOPAC+HVA/ドーパミン)の増加、つまりドーパミンのturnoverの増加、③前頭前皮質におけるセロトニン量の減少が明らかになった。今後さらに個体数を増やし、得られた結果の信頼性を高める必要はあるが、今回の結果は、前頭前皮質において見られたドーパミン神経線維の減少とは一見異なり、前頭皮質においてドーパミン神経機能はむしろ亢進していることが示唆された。さらに今回初めて、ダブル欠損マウスにおいてドーパミン神経系だけでなく、セロトニン神経系の異常が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ダブル欠損マウスを得るのに苦労し、遅れていた脳のモノアミン量測定についに着手することができ、ドーパミンだけでなくセロトニン神経系にも異常があることが明らかにできた。よって本年度は、研究課題は計画通りに進んだと言える。さらなるデータ数の増加は必要だが、その後も順調にダブル欠損マウスが得られており、一連のモノアミン量測定の結果は、次年度には決着をつけることができる。一方、Dat-Creマウスを用いたドーパミン神経細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作製にはマウスの掛け合わせが順調には進んでおらず、遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はモノアミン量の測定データ数を増やすとともに、今回新たに示唆されたセロトニン神経系の異常についても解剖学的な解析を行い、セロトニン神経の前頭前皮質への投射や、縫線核におけるセロトニン神経の数や配置などを調べる。またこれまでに得られたドーパミン、セロトニン神経系の異常がダブル欠損マウスにおける衝動性の亢進を引き起こしているのかを明らかにするために、ドーパミン神経伝達を抑制するような薬や、セロトニン神経伝達を亢進するような薬を投与した際に、断崖回避テストの結果が改善されるのかを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
無理に使用しきらなかったために、次年度使用額が生じた。少額ではあるが研究機関を当該年度より移動し独立したために当初の計画書提出時に比べ実験に必要なものが出てくると考え、無理に使用しきらずに、次年度に回すことにした。
|