研究課題/領域番号 |
17K07046
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 南 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20311194)
|
研究分担者 |
本間 達 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60361721)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 素材知覚 / 霊長類 / 視覚 / 触感 |
研究実績の概要 |
視覚情報による物体識別の手掛かりとして素材感や質感の表現が果たす役割が注目されている。素材知覚には視覚情報だけではなく触感情報もまた重要であるが、触感との関わりを含む素材感知覚の神経メカニズムはよく分っていない。そのためには、同一個体において素材感の知覚特性とニューロンレベルの電気活動の関連性を明らかにする必要があり、サルを用いた行動実験、電気記録実験、およびヒト被験者の行動実験との比較が欠かせない。本研究では主にサルを用いた行動実験に重点を置いている。ニホンザル3頭を対象に、触感と視覚を組みあわせた素材識別課題による訓練を行った。素材識別課題における素材識別指標として5つの参照刺激(木、金属、絨毯、毛皮、耐震ゲル)を使用した。開始レバー表面に素材刺激を、回答レバー表面に5種の参照刺激を取り付け、サルはレバーを押すと同時に刺激に触れる。開始レバーを押すと試行が開始され、同じ素材刺激の回答レバーを押すと報酬としてジュースを得る。レバーを遮蔽して触感情報のみで素材を識別する課題と、回答レバーの位置を変更しながら目視下で素材を識別して触感と視覚情報を利用させる課題を併行して行わせた。先行して訓練を開始していた2頭のサルでは、5つ参照刺激を用いた訓練課題の正答率が95%を超えるようになった。訓練中に新規素材25ヶを触らせて、五つのカテゴリーから選択させたところ、ヒト被験者を類似した弁別結果を得た。この成果の一部を、学会で報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行して課題訓練を始めていた2頭において、回答レバーの位置を変更しながら触感と視覚情報の連合を促す目的で、触感と視覚情報を利用させる課題を併行して訓練した。当初の予想に反し、触感のみで判断する課題に比べて課題習熟に時間がかかり、エラーが多く、課題デザインの変更による動物への負荷が大きいことが示された。本年度より三頭目のサルで素材識別課題による訓練を開始したが、訓練に時間を要するとともに、先行の二頭とはエラーの内容に顕著な違いがあり、引き続き慎重に訓練を進めている。当初、ハーフミラーを利用して視覚情報と触感情報のミスマッチ条件を作り出し、動物に課題を行わせる予定で準備を進めていた。これに先行して視覚情報と触感情報のミスマッチの影響をヒト被験者で調べたが、目視対象物と把持対象物が異なることを容易に感知し、相互作用の影響を正確に測ることができなかった。いくつかの実験設定を試した中で鏡像を用いるラバーハンド現象を利用した場合に、若干の影響を見いだした。引き続き最適な実験条件を探る必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、サルの訓練および行動実験を行う。本研究では3頭のサルで時期をずらして各実験を順次行うため、実験の進行にともない各年度の予定は前後する。テスト用刺激物体として多種多様な質感サンプル120ヶを用意したので、サルが素材識別課題に十分に習熟したら、一日の記録セッション中に参照刺激の他に数個のテスト刺激をそれぞれ一回ずつ呈示する。複数の記録セッションの結果をまとめてサルの素材カテゴリー分類を解析する。 本年度は課題遂行中の視線の解析および新規素材に対する反応を全素材で調べて、動物がもつ素材感をヒトのそれとを直接比較する。3頭目のサルの訓練進捗に合わせて、三頭の行動実験について成果をまとめることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していなかった国際学会での参加発表を行ったため、物品費の支出を一部削減して発表参加費用の不足分に充てた。そのために計画との差額を生じた。今年度の残金は国際学会への発表参加費に充てる。
|