研究課題/領域番号 |
17K07050
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 繁 電気通信大学, 脳・医工学研究センター, 特任教授 (70281706)
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研究分担者 |
宮下 真信 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 教授 (20443038)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚野 / 注意 / 自己組織化 / ニューロン / 空間周波数 / 星状膠細胞 / 皮質内側方結合 / スパースコーディング |
研究実績の概要 |
最初に、星状膠細胞からのグリオトランスミッター放出をモデル化し、視覚野ニューロン回路における三者間シナプスの可能な機能的役割をシミュレーションによって解析した。その結果、注意のレベルが上昇するとノルアドレナリンやアセチルコリンが分泌され、それによって星状膠細胞内のカルシウム濃度が上昇し、グリオトランスミッターが放出される。特に、その中でも、D-Serineはグルタメートに対するNMDA受容体の感受性を高める一方、ATPはシナプス前における開口放出を抑制することによって、視床-皮質結合におけるシナプス伝達の信号対ノイズ比を向上させ得ることを理論的に確認した。興奮性ニューロン同士の皮質内シナプス結合において、D-Serineの放出が顕著であるならば、注意のレベルが上昇することによって側方結合が増強することになる。次に、活動依存性の自己組織化によって形成されたマップ構造を反映した視覚野のスパイキングニューロンネットワークを構成し、視覚刺激に対するニューロンの動的反応のシミュレーションを実行した。その結果、側方結合を強めることにより、ニューロンが応答し得る空間周波数領域が拡張した。このことは、視覚に注意を向けている覚醒時には、網膜に投影される物体像の細かいパターンもよく見えるようになることを意味している。さらに、動いている縞模様に対して、モデル視覚野ニューロンは、皮質内抑制ニューロンによって各瞬間にはスパースにしか発火しないことが分かった。そこで、各ニューロンの受容野関数の入出力変数を逆にして基底関数とし、ニューロンの発火パターンから刺激の時空間パターンをデコードできるか否か計算してみたところ、完全ではないが動く縞模様がデコードできた。このことは、自己組織化された視覚野には、スパースコーディングと同様に視覚刺激を動的に表現する能力が内在することを示している。
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