研究課題
今年度もソウル大学との共同研究は新型コロナのため出張を含めて制限を受け、結局、島皮質味覚野―痛覚野間の機能協関の研究を進展させることができなかった。そのため、大阪大学人間科学部行動生理学八十島研究室との共同研究として、味覚嫌悪学習における島皮質味覚野の役割をさらに明らかにする研究を行い、本研究課題を終了することとした。味覚嫌悪学習については、平成30年度に、イスラエル・ハイファ大学(Kobi Rosenblum 教授)との共同研究において、味覚野島皮質の第5層錐体細胞が扁桃核への投射すること、また、島皮質胃腸関連領野の第2/3層錐体細胞が扁桃核並びに味覚野へ投射することが明らかにされた。さらに、味覚野のGABA作動性介在ニューロンの働きが味覚嫌悪学習に伴い強化された結果、島皮質味覚野と胃腸関連領野間のシータリズムの周期的同期化現象がデルタリズムに低下する可能性が示唆されていた。一方、本年度の八十島研との共同研究においては、臭化エチジウムをラット島皮質にガラス管電極により直接注入し、島皮質味覚野神経細胞及びグリア細胞を破壊し、味覚嫌悪学習にどのような影響を与えるかを調べた。臭化エチジウムの注入部位は島皮質味覚野に限局しており、味覚嫌悪学習そのものには、顕著な影響は認められなかった。これは、恐らく、島皮質胃腸関連領野が正常に機能したためであると考えられる。しかし、味覚野の損傷により、味覚認知ができず、特異的味覚との連合学習は成立しなかったため、味覚非選択的な嫌悪学習が成立したことになる。つまり、選択的味覚嫌悪学習には島皮質味覚野の働きが必要であるという結論を導くことができる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 16 ページ: 1-16
10.3389/fncel.2022.841239