研究課題/領域番号 |
17K07058
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中山 寿子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 助教 (70397181)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミクログリア / 小脳 / 神経回路形成 / 発達 / プルキンエ細胞 / 登上線維 / シナプス再編成 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、発達期小脳皮質における登上線維-プルキンエ細胞間シナプスの刈込みにミクログリアが必要であるという申請者の先行実験の結果を受けて、ミクログリアがどのような機構で登上線維シナプスの刈込みに関与するのかを明らかにすることを目的とする。 平成29年度には、ミクログリアによる登上線維の貪食の有無を検討する実験を行った。Alexa色素結合デキストランで登上線維を順行性標識したうえで小脳切片を作成し、抗Iba1抗体による免疫染色を行い、Iba1標識ミクログリアに内包されたAlexa標識登上線維断片の頻度を解析した。その結果、刈込みが盛んに起こる生後10日目頃においても、プルキンエ細胞層付近にあって、登上線維断片を内包したミクログリアはごく低頻度でしか認められず、貪食はミクログリアが登上線維の刈込みに作用するための主要な作用機構ではないことが示唆された。 次に、登上線維シナプスの刈込みに関与すると報告のある平行線維シナプスと抑制性シナプスの形成および機能を、ミクログリアが減少した遺伝子改変マウスを用いて解析した。その結果、平行線維シナプスの形態・機能に有意な変化は認められなかったが、抑制性シナプス伝達が生後10-12日目に有意に減弱しているという結果を得た。そこで、生後9-12日目のミクログリア欠損マウスにジアゼパムを腹腔投与したところ、登上線維の刈込み異常が正常化した。従って、ミクログリアは抑制性シナプス伝達を促進することによって、登上線維の刈込みを促進する作用があることが示唆された。 これらの結果について、第40回日本神経科学大会、新学術研究「グリアアセンブリによる脳機能発現の制御と病態」第4回夏のワークショップおよび第5回成果報告会、第8回新潟大学脳研究所共同研究拠点国際シンポジウムにてポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には当初の計画通り、ミクログリアによる登上線維の貪食、プルキンエ細胞へのシナプス入力の修飾という2つの可能性について、電気生理学的および形態学的に実験を遂行することができた。また、論文執筆にも至ることができたた。ゆえに、本年度の研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、所属機関を異動するので実験装置の立ち上げ等で実験が一時滞ることが予想される。ただし、異動先研究室での実験装置はほぼ揃っているので速やかに実験を再開できると考えられる。実験装置の立ち上げと平行して、平成29年度までに得られた成果を論文発表することを目指す。実験環境の整備が完了したら、ミクログリアが抑制性シナプス伝達を修飾する際に関与する分子を明らかにするための実験を行う。昨年度までの準備実験によって、シナプス刈込み期の小脳においてミクログリアで選択的な蛋白発現を認めた分子が得られているので、その候補分子の抑制性シナプス伝達への急性作用を電気生理学的に解析する。その他、発達期の野生型マウスおよびミクログリア欠損マウス小脳に候補分子や候補分子の機能阻害抗体を慢性投与する実験を行い、刈込みがどのような影響を受けるかを調べる実験も行う。平行して、ミクログリアによる抑制性シナプス伝達の修飾が、小脳皮質以外の脳部位でも一般的に認められる現象であるかを検討する実験も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:研究期間後半に論文執筆にエフォートが偏ったため、実験動物および試薬等の購入費用が少額であったため。 使用計画:執筆中の論文を投稿するための費用として使用する。
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