本研究は脊椎動物における最高次の脳中枢である終脳の進化的変遷を探るべく、脊椎動物の全系統を網羅し脳の形態と回路形成に関わる発生機構の解析を進めた。その結果、終脳のパターニングに関わる分子機構の多くが円口類ヤツメウナギや軟骨魚類のサメで見られた一方で、条鰭魚類のナマズでは一部の遺伝子発現様式が変化していることが明らかになった。さらに脳の多様化の鍵を握る遺伝子について、新規な脳領域であるナマズの顔面葉の発生には、FGFやWNTなどの分子シグナルが関わることが判明した。したがって、脊椎動物の脳は最初期の段階で基本発生機構が確立され、一部の系統で発生機構の改変によって多様化してきたと考えられる。
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