研究課題/領域番号 |
17K07060
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
松坂 義哉 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (30312557)
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研究分担者 |
虫明 元 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80219849)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前頭前野 / 頭頂連合野 / 意思決定則 / ニューロン |
研究実績の概要 |
1) 3頭のニホンザルを次の課題を遂行するように訓練した。(1) アクション決定則(pro-reach, anti-reach)選択課題 - この課題では目前に設置したスイッチパネルの左右どちらのボタンを押すか、そのアクションの決定則を使い分けさせる。pro-reachでは最初、パネル中心のフルカラー発光ダイオード(以下LED)が空色、又は緑色に短時間点灯する。その後、左右どちらかのLEDが白く点灯する。サルは発光したLEDと同じ側のボタンを押すと報酬を与えられる。一方、anti-reachでは中心のLEDが青、又は赤に短時間点灯し、そののち左右どちらかのLEDが白く点灯する。サルは発光したLEDと反対側のボタンを押すと報酬を与えられる。(2) 認知判断則(match, non-match)決定課題 - この課題では提示された二つの色が同じ(match)か異なる(non-match)か検出するよう認知判断則の使い分けをさせる。matchでは中心LEDが黄色または緑色に短時間点灯する。その後、左右のLEDが同色または異なる色に点灯する。サルは左右が同色の時に手元キーを離すと報酬が貰える。non-matchでは中心LEDが赤または紫に点灯し、その後左右のLEDが同色または異なる色に点灯する。サルは左右の色が相異なる時に手元キーを離すと報酬が貰える。 現在、これら二種類の課題を遂行できる様サルを訓練しつつあり、訓練終了次第、生理学的実験を開始する手筈である。 2) 行動訓練の一方で過去のデータ(Matsuzaka et al J-Neurosci 36: 5974-5987, 2016)を再解析している。その結果、行動戦術の決定、感覚入力と行動戦術の統合、アクションの決定に前頭葉内側領域(後内側前頭前野、前補足運動野、補足運動野)がそれぞれ役割を分担して参画している事を発見し、発表した。現在、その結果を論文化しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訓練は順調に進み、どのサルもアクション決定則、認知判断則課題を遂行できるようになった。但し、アクション決定則課題 - 認知判断則課題の間の切り替えがスムーズにいっていない。ニューロン活動記録中に随時課題を切り替えて、活動を比較することが困難と予想される。そのため、代替案として認知判断則課題をより簡単な課題(例. 作業記憶課題など)に置き換えることを考慮している(次項参照)。
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今後の研究の推進方策 |
1)平成30年度と同じく神経活動の多点同時記録、細胞種やその層構造の特定を行いつつ、得られたデータをデータベース化する。生理学実験終了後に、多重標識法によって前頭前野から皮質運動野及び頭頂連合野に投射するニューロンの分布、及びそれぞれの投射細胞のオーバーラップを調べる。具体的には、生理学的に同定された皮質運動野及び頭頂連合野にそれぞれ別種の逆行性トレーサーを注入し、これらの領域に投射する前頭前野ニューロンの細胞体を標識して、その分布と重なり具合を解析する。それによって、これらの領域への出力は同一のニューロンから発しているのか、それとも別個のニューロンから発しているのか、それによって前頭前野からこれらの領域には同じ出力が送られているのか、異なる出力が送られているのかが判明すると予測される。 2)行動課題訓練が上手く行かない場合の代替案として、代替案として認知判断則課題をより簡単な課題(例. 作業記憶課題など)に置き換えることを考慮している。異なる知的作業を脳が遂行する際に、同一のニューロンからなる神経ネットワークがどのように多面的に使われているのか?は未だ知見が少なく、行動神経科学研究において重要なテーマになりうると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
油圧駆動式電極マニピュレーターを購入する予定だったが、当該製品がアップデートされるとの情報があり、購入を控えたため。アップデートを待って購入する予定。
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