研究課題/領域番号 |
17K07060
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
松坂 義哉 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (30312557)
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研究分担者 |
坂本 一寛 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (80261569)
虫明 元 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80219849) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ニューロン / 前頭前野 / 前補足運動野 / サル / 行動戦術 |
研究実績の概要 |
本年度は、大脳前頭葉の3領域(後内側前頭前野pmPFC, 前補足運動野pre-SMA, 補足運動野SMA)からの神経活動データを収集して生理学実験を完了した。この実験では、動物(ニホンザル)を訓練して空間位置の情報(左右)から適切な行動(左右のボタン押し)を選択させた。但し、行動選択のプロトコル(行動戦術 tactics)を二種類(pro-reach vs. anti-reach)用意し、pro-reachでは呈示された空間位置と同じ側、anti-reachでは反対側のボタンを押すように訓練し、その課題を遂行中のニューロン活動を上記の3領域から記録した。
神経活動解析の結果からは、以下の二点が明らかになった。 (1) 各領域のニューロン集団が異なる行動関連情報をコードしていることが明らかになった。即ち、pmPFCのニューロン集団は空間位置の情報、行動戦術、および結果として選択された行動をすべてコードする一方、pre-SMAのニューロン集団は位置情報自体はコードして居らず、行動戦術及び、選択された行動をコードしていた。そしてSMAのニューロン集団は主として行動それ自体をコードしていた。 (2) 脳が多様な知的作業を行う際に、個別のニューロンが異なる課題間でどのように機能を切り替えるかを調べるために、上記の課題を改変した課題を動物に遂行させ、オリジナルの課題遂行中のニューロン活動と比較した。その結果、課題間におけるニューロンの機能分担はニューロンのタイプや皮質領域ごとに異なることが判明した。例えば、空間位置情報をコードするpmPFCニューロンは、どちらかの課題でしか空間位置をコードせず、その機能は課題選択的である一方、空間位置をコードするpre-SMAニューロンには課題非選択的なものが見られた。一方、行動戦術、アクションをコードするニューロンはどの領域でも約2/3が課題選択的、1/3課題非選択的であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、異なる知的課題遂行時のニューロンの機能分担についてのデータが得られたことにより、脳が多様な知的課題の学習・遂行を可能にする仕組みについての考察を進める事が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
上記【研究実績の概要】(2)から、知的課題の遂行におけるニューロンの機能は特定の課題に特化したものと、課題に依らない汎用的な物の2種類がある事が窺われる。今後は課題特異的、汎課題的な機能を持つニューロン集団それぞれがどのようにして多様な知的課題の遂行を可能にしているか、考察していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、電極マニピュレーター(㈱ナリシゲ製 MO-972)を購入する予定だったが、納品が年度内に間に合わない事が判明したため。
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