研究実績の概要 |
有限個のニューロンからなる神経回路網がどのようにして、多様な知的行動を生成させられるのか?という問題への答えを得るために、以下の実験を行った。まずニホンザルに対して、左右のボタンのどちらかを押すように訓練した。但し、どちらのボタンを押すかはvisuospatial cue (右 vs. 左)と戦術tactics(visuospatial cueと同側 vs. 反対側のボタンを押す)の組み合わせによって決定される。また、課題を2種類実行させ、それぞれの課題を行っている時のニューロン活動を計測・課題間で比較した。tactics precued taskでは先にtactics cueが提示され、次にvisuospatial cueを提示して押すべきボタンを決定させる。一方、location precued taskでは先にvisuospatial cue、次にtactics cueを提示して押すべきボタンを決定させる。 これら二種類の課題を遂行中のニューロン活動を後内側前頭前野(pmPFC), 前補足運動野(pre-SMA), 補足運動野(SMA)から記録し、同じニューロンが異なる課題に対して機能を切り替えるのか、それとも特定の情報(例.tactics)をコードするニューロンは他の課題でもtacticsをコードするのか検証した。その結果、pmPFCのニューロンの70-90%はtactics, visuospatial cue, actionのいずれについても、tactics precued task, location precued taskの一方でのみ選択的な活動を示した。この結果からは前者の仮説、つまり前頭連合野のニューロンは二つの課題が共通する要素を含んでいても、課題によって動的に機能を切り替える事を支持する証拠が得られた。
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