研究課題
パルブアルブミン(PV)-Creマウスの前脳基底核にCre依存的チャネルロドプシン(ChR2)発現アデノ随伴ウィルスベクター(AAV)を注入することにより前脳基底核PV含有GABA作動性ニューロンのみにChR2を発現するマウスを作製した。ジャクソン社(米国)よりPV-Creマウスを購入し、脳定位固定装置を用いて前脳基底核にAAVを注入した。AAV注入3週間後に前脳基底核を含む冠状断急性脳スライスを作製し、ChR2に付随するenhanced yellow fluorescent protein(EYFP)の発現を、蛍光顕微鏡を用いて観察した。注入時期および座標の検討を行ない、生後3週齢前後にAAVを注入することにより前脳基底核でのEYFPの発現が安定して見られた。AAVChR2が注入3週間後に、EYFP発現ニューロンおよび軸索周辺のニューロンからパッチクランプ法を用いて青色光誘発性抑制性シナプス後電流(IPSCs)が記録され、機能的なChR2が発現していることを確認した。次に、PV含有GABA性ニューロンからアセチルコリン性ニューロンへのGABA性入力を記録するために、前脳基底核におけるアセチルコリン性ニューロンのマーカーであるCy3-labeled anti-murine NGFrを脳室内に注入した。注入1日後から前脳基底核内にCy3の傾向が確認され、アセチルコリン性ニューロンの同定が可能となった。そして、同定したアセチルコリン性ニューロンから青色光誘発性抑制性IPSCsがゆうはつされ、さらに、ムスカリン受容体を介するIPSCs抑制作用が認められた。
2: おおむね順調に進展している
理由前脳基底核内のPV含有GABA性ニューロンーアセチルコリン性ニューロン間のシナプス伝達機構を精密に解析するためには、これら2つのタイプのニューロンを精密に同定した上でパッチクランプ解析を行なうことが不可欠である。本研究課題では、この目的を達成するために、研究代表者が確立した前脳基底核内のアセチルコリン性ニューロンの同定法をPV-Creマウスに適用して2種のニューロンに異なる蛍光を発現させることに成功した。さらに、同定されたアセチルコリン性ニューロンから青色光誘発性IPSCsを誘発し、ムスカリン受容体を介する修飾作用の解析を開始することができた。
1) 青色光誘発IPSCsに対するムスカリン受容体を介する修飾作用に関して、作用部位、イオン機構および生後発達変化の解析を行なう。2)ムスカリン受容体には、膜表面のみではなく、細胞内にも存在するサブタイプが報告されており、中枢シナプス伝達修飾における機能は興味深い。そこで、今回同定された、前脳基底核内のパルブアルブミン含有ニューロンからアセチルコリン性ニューロンへのシナプス伝達における細胞内ムスカリン受容体の機能解析を行なう。その際、膜透過性および不透過性のムスカリン受容体アンタゴニストが、有力な薬理学的toolとなる。
遺伝子改変マウスの出産状況が安定しないじきがあり、それに伴い、電気生理実験の回数が減少した、現在、安定した供給が得られるようになったので、次年度はその分も電気生理実験の回数が増加し、研究費を使用できると予想される。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件)
Brain
巻: 141 ページ: 3098-3114
10.1093/brain/awy246.
Neuroscience
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