研究課題/領域番号 |
17K07064
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
中村 行宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40460696)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シナプス前終末 / カルシウムチャネル / シナプス小胞 / カルシウムキレート剤 / Held萼状シナプス / 開口放出 / パッチクランプ / シミュレーション |
研究実績の概要 |
シナプス前末端の開口放出部位における即時放出可能シナプス小胞の局所分布を調べる目的で、生後2週齢のマウスより脳幹の急性スライス標本を作製し、Held萼状シナプスのシナプス前末端と台形体核神経細胞から、同時パッチクランプ記録を行った。シナプス前末端を1, 2, 10ミリ秒間脱分極して誘発された興奮性シナプス後電流記録し、これにdeconvolution解析を適用して放出されたシナプス小胞数を推定した。さらにパッチ電極よりCaキレート剤グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)をシナプス前末端へ注入し、EGTAによるシナプス小胞放出の抑制作用を定量した。脱分極の持続時間にかかわらず、EGTAによってシナプス小胞の放出は約半分に抑制した。この実験結果を、2018年度に行ったモデル研究の結果に基づいて解析し、放出されたシナプス小胞と電位依存性カルシウムチャネル(クラスター)の距離の推定を試みた。その結果、脱分極の開始後1ミリ秒では、チャネルから20ナノメートル付近にドックしている近位のシナプス小胞が主に放出されるのに対し、脱分極が長くなるにつれてチャネルから遠い小胞も放出に参画するようになり、10ミリ秒の脱分極では100ナノメートル付近に位置している小胞も放出されることが示された。即時放出可能シナプス小胞のプール全体としては、約7割がチャネルから50ナノメートルまでの距離に、残り3割がそれよりも遠い距離にドックしていると推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の2年目で、即時放出可能シナプス小胞の空間分布の同定まで終了し、計画は順調に進展している。短期可塑性については、シナプスを5ミリ秒の間隔で2発刺激した場合に記録された興奮性シナプス後電流の波形に基づいて、放出されたシナプス小胞の位置の同定を試みているが、現在のところ1発目と2発目の刺激の間に明らかな差は認められておらず、複数の刺激条件のを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
およそ当初の計画通り進展しており、今後の研究推進方策に大きな変更はない。研究計画の3年目では、2発刺激によって短期可塑性が生じたときの放出されるシナプス小胞の空間分布の検討を続けるとともに、生後1週齢のマウスについても実験を行う。また研究計画の最終年度にあたることから、研究成果のとりまとめに向けた作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度後半に実験に必須である防振台に不調が生じ、修理もしくは更新の必要が生じた。平成30年度交付額だけでは予算が不足する恐れがあるために、対応策の決定に手間取った。最終的に2019年度の交付を待って機器を更新することに決定。本年度防振台を購入する予定である。また年度末3月に開催された国内学会参加費用の精算が、年度をまたいでから行われることも使用残額が膨らんだ一因である。
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