研究課題/領域番号 |
17K07068
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 紀光 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (10322207)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スパイン / 統合失調症 / 電気生理 / 2光子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
脳内の神経細胞はシナプスを介して連絡しており、大脳皮質のグルタミン酸作動性シナプスの多くは樹状突起上のスパインという小突起構造に形成される。可塑的変化を伴うことが知られているこのスパインは脳機能の記憶素子と考えられ、統合失調症をはじめとする多くの精神疾患やそのモデル動物でスパイン形態、密度異常が多数報告され、これら疾患の病因、病態生理と想定されている。一方で、シナプス異常がどのようなメカニズムで神経回路障害や、その結果としての個体レベルの行動異常を誘発するのかは全く解明されていない。本研究では統合失調症に焦点をあて、この疾患のモデルマウスが示す樹状突起シナプス形態異常が神経細胞活動へどのように寄与しているのかを電気生理学的に直接的な評価することにより統合失調症の病態生理に迫ることを目的とする。 統合失調症脆弱性因子を操作した統合失調症モデルマウスを作製し、前頭前野の樹状突起スパインの形態異常を確認した。このモデルマウスから急性脳スライス摘出標本を作製し、第2/3層錐体細胞からパッチクランプ記録を行い、興奮性シナプス電流を観察、さらに2光子顕微鏡、ケイジド試薬を利用して単一スパイン上のグルタミン酸受容体の動態を観察した。また生体標本でも第2/3層錐体細胞から2光子顕微鏡を利用したパッチクランプ記録、Cell-attached記録を行い、生理条件に近い錐体細胞の発火パターンを観察した。モデルマウスに特異的と思われる神経活動が観察されており、スパイン異常とどのような関連があるかについて現在さらなる解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、統合失調症モデルマウスの作製およびその急性脳スライス摘出標本を利用した実験を進め、また次年度以降の計画であった生体標本を利用した実験にも既に着手している。実験を進めるにあたり十分な状況であることを確認できているため、初年度としては順調であると判断し、本研究課題は概ね円滑に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
樹状突起スパイン異常が引き起こす生理学的な病態を、急性脳スライス摘出標本、生体標本を利用して明らかにしていく。さらに、スパインCaイメージングとパッチクランプを組み合わせ、異常スパインへのシナプス入力と神経発火のタイミングの相関を直接的に観察していく。以上により、異常スパインの病態がどのように統合失調症の症状へと導く引き金となるかを明らかにしていく。次年度は学会発表、論文発表を視野に入れ、研究計画をさらに精力的に進めていく。
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