研究課題/領域番号 |
17K07069
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
藤川 顕寛 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 特別協力研究員 (50414016)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | チロシンホスファターゼ / ドーパミントランスポーター / 覚せい剤 / 依存 / 阻害化合物 |
研究実績の概要 |
PTPRZは、主に脳神経系で発現している受容体型チロシンホスファターゼである。PTPRZのヌル型ノックアウト(KO)マウスでは、覚せい剤の作用サイトであるドーパミントランスポーター(DAT)活性の低下が認められている。本課題では、PTPRZシグナルによるDAT制御機構の全容を解明する。さらに覚せい剤依存に対するPTPRZ阻害の治療効果について動物実験レベルでの評価を実施することを目的にした。 1)PTPRZによるDAT活性の制御機構: 当初計画通り、蛍光タンパク質GFP融合DATを安定発現する細胞株を樹立し、その細胞のPTPRZをノックダウンした細胞株を用いてDATの細胞内トラフィッキングのイメージング解析を実施している。またPTPRZによって脱リン酸化される基質分子の一つと DATとの免疫共沈を確認した。DATトラフィッキングを制御するPI3K経路とPTPRZを結びつける基質分子(とその脱リン酸化サイト)を同定することに成功した。 2)覚せい剤依存に対するPTPRZの阻害効果の評価: 当初計画通り、マイクロダイアリシスおよび条件付け場所嗜好試験を用いた Ptprzの変異型ノックイン・マウスの評価が完了したが、ラットレバー押しオペラント学習テストの構築については、当該装置の導入が大幅に遅れたため、平成29年度実施できなかった。 3)その他特記事項: 申請者は、PTPRZの活性が覚せい剤感受性に反映するという仮説を提唱しているが、これに関わる発見としてPTPRZの新規スプライシングアイソフォームを同定した。本新規アイソフォームの脱リン酸化活性(Kcat/Km)は、これまで知られていたアイソフォームの約10倍であると判明し、論文発表した。またPTPRZの活性制御モデルとして、細胞外リガンド分子の結合に伴うPTPRZ受容体のダイマー形成が提唱されているが、平成29年度、その正当性の裏付けとなるPTPRZのダイマーインターフェイスを実験的に同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、PTP阻害剤の覚せい剤依存に対する影響を評価するために、採択後はすぐにラット用レバー押し学習装置を購入する計画であった。しかし所内動物実験施設内にスペース的制限もあり、関係者間で調整し、より汎用性のある解析システムが共通施設に設置されることになったが、その納品が平成29年度末と当初の予定から大幅に遅れたため、平成30年度から実施する。
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今後の研究の推進方策 |
1)PTPRZによるDAT活性の制御機構 平成30年度からの解析では、DATトラフィッキングの制御に関わるPTPRZシグナルを解明する。また野生型マウスとPtprz変異型マウスの線条体組織を用いて、その相互作用の生理的妥当性を実証する。 2)覚せい剤依存に対するPTPRZの阻害効果 当初予定が遅れて、平成30年度からのラットレバー押しオペラント学習テスト系を構築し、 PTP阻害が覚せい剤依存に及ぼす効果を評価する。以上 (1,2)の結果をまとめて論文投稿する。 PTP阻害剤の評価実験の開始時期が予定より大幅に遅れたこともあり、他研究グループとの競合が懸念されるPI3K経路とPTPRZを結びつける基質分子(脱リン酸化サイト)の同定および、ダイマー化のインターフェイスの同定については、それぞれ独立して論文発表を急ぐことにする。
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