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2017 年度 実施状況報告書

グリアからの小胞性グルタミン酸放出の生理的意義

研究課題

研究課題/領域番号 17K07070
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

宮下 知之  公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (70270668)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードグルタミン酸 / グリア細胞 / 学習 / 記憶 / ショウジョウバエ / vGluT / 開口放出
研究実績の概要

ショウジョウバエを用いた罰を無条件刺激とする連合学習において、罰として使用される電気ショックの情報は、条件刺激である匂い情報とキノコ体で連合する。条件刺激である匂いの情報は、匂い神経から、1次中枢であるantennal lobeを経てキノコ体に伝えられるが、無条件刺激である電気ショックの情報はどのようにキノコ体に伝えられているかは未だに不明である。一方最近我々は、ショウジョウバエのグリア細胞の1種であるEnsheathingグリアに特異的に発現する新規のvGluT、DvGluT2を同定した。近年、グルタミン酸(Glu)は神経細胞からだけでなくグリア細胞からも神経伝達物質として放出されていると考えられるようになってきた。2004年、初代培養グリア細胞を用いた研究からvGluTが神経細胞だけでなくグリア細胞にも発現し、Glu放出を担っていることが報告されたが(Montana et al., J. Neurosci., 2004)、vGluTがグリア細胞に存在する証拠はないとする報告も有り、グリア細胞によるGlu放出に関しては、その分子的な実体も生理的な意義についても未だ不明のままである。そこで、RNAiを用いてDvGluT2をグリア細胞でKnock downすると、匂いと電気ショックを用いた連合学習が障害され、DvGluT2がグリア細胞内で機能している事が示唆された。さらに、活動依存的なシナプス伝達の痕跡の可視化法を利用して、キノコ体とEnsheathingグリアとの間で、どの様なタイミングで開口放出が起こっているかを調べた。その結果、驚いたことに、匂いと電気ショックを同時に与えた時だけでなく、電気ショックのみを与えた時でも開口放出の痕跡が検出された。このことからEnsheathing グリアからのGlu放出が、電気ショックの情報をキノコ体に伝えている可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ショウジョウバエで、グリア細胞に発現が示唆される新規の小胞型グルタミン酸トランスポーター(vGluT)を同定し、Drosophila vGluT2(DvGluT2)と名付けた。DvGluT2の抗体を作成し、免疫染色を行うと、ショウジョウバエで同定されているグリア細胞の内、Ensheathing gliaとよばれるグリア細胞にDvGluT2が発現している事を見出した。そこで、成虫の神経細胞やグリア細胞でDvGluT2をノックダウンしたところ、学習に強い障害が現れた。このことからDvGluT2は学習に重要な機能を持っていることが示唆された。そこで、実際にグリア細胞からグルタミン酸が開口放出されているのかを調べるために、開口放出の痕跡を可視化することができる機能的GRASP法をおこなった。匂いと電気ショックを用いた連合学習時に、学習記憶の中枢であるキノコ体を取り囲むEnsheathig gliaから、キノコ体への開口放出があるかを調べたところ、キノコ体上に開口放出の痕跡が現れた。驚いたことに匂いでは痕跡が現れなかったが、電気ショックのみで開口放出の痕跡が現れた。このことからEnsheathing gliaからのグルタミン酸放出は、キノコ体に電気ショックの情報を伝えている可能性が考えられた。

今後の研究の推進方策

Ensheathing gliaからの開口放出が電気ショックの情報を伝えている可能性が考えられたので、生きたショウジョウバエに匂いや電気ショックを与えながら、特定の細胞内シグナルの動態を調べることができるin vivoのイメージングを行う。Ensheathingグリアに発現させたDvGluT2::pHluorinを用いたimagingでは、電気ショックに合わせて開口放出を示す蛍光の変化が観察されたが、これが本当にGluを放出しているのか? また、どのようにキノコ体に伝わり、匂い情報と連合されるのか?を、GluのセンサーであるiGlusnFRや、 [Ca2+]iの変化を観察できるG-CaMP、膜電位の変化を観察できるLOTUS-Vなどを発現させたショウジョウバエを用い明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

物品費の出費が当初の計画より安く抑えることができたため。
残金は、Lotus-vを発現するtransgenic flyの作成とimaging時に必要なアンタゴニスト等の購入に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Vesicular glutamate release from enshathing glia transmits punishment required for aversive associative conditioning in Drosophila.2018

    • 著者名/発表者名
      Tomoyuki Miyashita and Minoru Saitoe
    • 学会等名
      第40回日本神経科学大会
  • [学会発表] グリアからのグルタミン酸開口放出の役割2018

    • 著者名/発表者名
      宮下知之
    • 学会等名
      分子高次機能研究会
  • [学会発表] Glial vesicular release of glutamate transmits aversive information required for aversive associative conditioning in Drosophila.2018

    • 著者名/発表者名
      Tomoyuki Miyashita and Minoru Saitoe
    • 学会等名
      新学術領域班会議

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公開日: 2018-12-17  

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