研究課題/領域番号 |
17K07070
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
宮下 知之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (70270668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学習 / 記憶 / グリア細胞 / グルタミン酸 / vGluT / エクソサイトーシス |
研究実績の概要 |
近年、グリア細胞の放出する神経伝達物質が、神経細胞のシナプス可塑性をコントロールしていることが明らかになってきた。しかし、 gliotransmitterには未だ不明な点が多い。最近我々は、ショウジョウバエのグリア細胞に発現する新規のvGluT、 DvGluT2を同定した。RNAiを用いてDvGluT2をグリア細胞でKnock downすると、匂いと電気ショックを用いた連合学習が障害された。更に、活動依存的なシナプス伝達の痕跡の可視化法により、キノコ体と、キノコ体を囲むEnsheathingグリアとの間で、電気ショックを与えた時におこる開口放出の痕跡が検出した。しかし、実際に電気ショック時にグリアからのGlu開口放出が起こっているかどうかは明らかでない。そこで、生きたショウジョウバエに匂いや電気ショックを与えながら、特定の細胞内シグナルの動態を調べることが出来るin vivoのイメージングを行った。Ensheathingグリアに発現させたDvGluT2::pHluorinを用いたimagingでは、電気ショックに合わせて開口放出を示す蛍光の変化が観察された。細胞内Ca2+の変化を調べるG-CaMPやGlutamate (glu)センサーのiGlusnFRを発現させてimagingを行うと、電気ショックに合わせてキノコ体の細胞内Ca2+濃度、細胞外gul濃度が上昇した。このことから、グリア細胞がgluを放出することで電気ショックの情報をキノコ体に伝えている事が示唆された。さらに電子顕微鏡による観察で、キノコ体周りのEnsheathingグリアの内部にベシクル様構造があること、免疫電顕により、DvGluT2がベシクル様構造上に存在する事を確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージングについては、使用した様々なプローブの感度や発現量、更に観察している脳の動きなどが問題になったが、何とか解決し、論文に必要なデーターを取り終わった。免疫電顕も共同研究者の協力により成功した。
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今後の研究の推進方策 |
グリアから放出されたグルタミン酸が、どのようにキノコ体で受け取られ、学習が成立するのかをimagingとbihaviorで証明して行く。また、これまで電気ショックの情報をキノコ体に伝えていると信じられているドーパミンと今回我々が発見したグルタミン酸放出との関係も明らかにして行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
電子顕微鏡やイメージングなどの実験において、技術的に難しいといわれる免疫電顕法やGal4やLexAドライバーによるイメージングプローブの発現が予想以上に困難で、予定していた実験計画の見直しが必要となったため。(他の実験計画を後回しにせざるを得なかったため。) 今後は、本研究により明らかになった電気ショック情報を伝達しているグリア細胞からのグルタミン酸放出と、現在ショウジョウバエにおいて電気ショック情報を伝達していると考えられているドーパミンとの関係を行動学的、生理学的に明らかにしていく。
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