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2018 年度 実施状況報告書

GABA伝達シグナルを介した神経障害性疼痛治療への挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 17K07078
研究機関琉球大学

研究代表者

高山 千利  琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60197217)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードGABA伝達機構 / 疼痛行動検査 / K+,C1-共輸送体(KCC2) / 小胞型GABA輸送体 / ノックアウトマウス / 脛骨神経 / 腓腹神経 / 電子顕微鏡解析
研究実績の概要

①マウス脛骨神経損傷モデルを用いて、慢性疼痛の発生機序を解析している。本年度は、さらに症例数を増やし、後角を脛骨神経領域、腓腹神経領域に分けて精査し、様々な変化の時間的相関性を詳細に解析した。その結果、神経障害性疼痛の発症と持続では別のメカニズムがあることを明らかにした。神経障害性疼痛の発症は以下の機序である。(1)損傷によって神経線維の末梢部分がワーラー変性を生じる。(2)変性に続いて、知覚神経の中枢側終末より、サイトカインなどの因子が放出される。(3)(2)で放出される因子に反応してミクログリアが増殖・活性化される。(4)ミクログリアよりBDNFが放出される。(5)BDNFに反応して知覚神経でのKCC2の発現が抑制される。(6)細胞内Clイオン濃度が上昇する。(7)GABAの抑制機能が低下する。(8)痛覚反応閾値が低下し、アロジニアが発生する。一方、持続に関しては以下のメカニズムが働くと考えられた。(1’)ワーラー変性が収束し、軸索の再生が進む。(2‘)障害されていない神経(腓腹神経)の中枢側終末より別の種類の因子が放出される。(3’)(2’)の因子に反応してミクログリアの活性化が持続する。(4)以下は共通でアロジニアが持続する。これらの結果は、論文として投稿し、結果を待っている。
②GABA伝達に関連する分子のうちKCC2のノックアウトマウスとVGATのノックアウトマウスのヘテロ接合体を用いて、痛覚閾値の変化を経時的に解析した。その結果、いずれのマウスにおいても、手術前から閾値の低下(アロジニア)が観測された。脛骨神経障害モデルを作製すると、さらに閾値が低下し、長期間持続した。これらのことより、脛骨神経損傷後、GABAの抑制作用が減弱することが明らかになった。さらに、これまで予想されていた興奮性への変化は生じず、抑制性のままであることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

正常マウスにおける神経障害性疼痛の発症と持続のメカニズム解析は終了し、論文査読結果を待っている段階である。
ノックアウトマウスに関しては、すでに研究を始めて結果が出始めている。最終年度は症例数をさらに増やし、遺伝子変化の解析を進めれば、期間内に目標を達成することが可能と考えている。

今後の研究の推進方策

GABA伝達のうち、GABAの作用の変化に大きく関与する分子は、その作用を決定するKCC2とGABA放出に関与するVGATの2分子である。これらの分子をすべて欠損させると出生後すぐに死亡するため、発現量がそれぞれ半分であるヘテロ接合体を使用している。大まかな傾向は、概要で記載したとおりである。
最終年度は、症例数を増加させ、また、障害の種類を、切断縫合のほかに、結紮、切断も採用し、行動評価を詳細に検討している。加えて、これまで進んでいなかった、脊髄後角でのシグナル分子の変化、ミクログリアの変化を重点的に解析する予定である。(1)行動評価は従来のvon Frey法を用いる。(2)ミクログリアの増殖はIba1の免疫組織化学法を用いる。(3)GABAの機能に関与するKCC2の発現量は、RT-PCR法と免疫組織化学法を用いた形態計測を行って評価する予定である。
さらに、上記の結果をもとに、KCC2の拮抗薬を用いた介入研究を試験的に行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

①本年度はノックアウトマウスの繁殖が不良で、動物の購入費用および飼育施設使用料が予定を下回った。その分の購入および使用量が次年度加算される。
②予定していた国際学会が都合により出席できなかった。本年度は出席予定である。
③論文がRejectされたため、投稿費用、別刷費用が発生しなかったが、その分次年度に加算される。
③最終年度、ノックアウトマウスの繁殖および実験のための費用が多くかかることが予想される。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Embryonic development of GABAergic terminals in the mouse hypothalamic nuclei involved in feeding behavior2018

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Masato、Shimizu-Okabe Chigusa、Kim Jeongtae、Kobayashi Shiori、Matsushita Masayuki、Masuzaki Hiroaki、Takayama Chitoshi
    • 雑誌名

      Neuroscience Research

      巻: 134 ページ: 39~48

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.neures.2017.11.007

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脊髄におけるグリシントランスポーター1(GlyT1)の発達変化2019

    • 著者名/発表者名
      清水千草、平安山貴江、小林しおり、高山千利
    • 学会等名
      第124回 日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] Distinct development of the glycinergic terminals in the ventral and dorsal horns of the mouse cervical spinal cord.2018

    • 著者名/発表者名
      Chigusa Shimizu, Masanobu Sunagawa, Shiori Kobayashi, Jeongtae Kim, Chitoshi Takayama
    • 学会等名
      11th FENS ヨーロッパ神経科学学会
    • 国際学会
  • [学会発表] Modulation of respiration-related activities activated by GABA and Cl- co-transporters in the perinatal mouse hypoglossal nucleus.2018

    • 著者名/発表者名
      Akihito Okabe, Chigusa Shimizu, Jongtae Kim, Shiori Kobayashi, Chitoshi Takayama
    • 学会等名
      11th FENS ヨーロッパ神経科学学会
    • 国際学会
  • [学会発表] Re-arrangement of synaptic connections associated with altered inhibitory input of Purkinje cell-specific vesicular GABA transporter knockout mice.2018

    • 著者名/発表者名
      Shiori Kobayashi, Jeongtae Kim, Chigusa Shimizu-Okabe, Chitoshi Takayama
    • 学会等名
      第41回日本神経科学大会

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公開日: 2019-12-27  

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