視床と大脳皮質が構成するループ回路の動作を制御する視床網様核の感覚細胞の活動に対する高次脳機能(大脳皮質前頭前野の活性化)の作用、及び、視床核での異種感覚情報の干渉を調べ、注意や知覚の神経機構の解明に取り組んだ。 当該年度では、高次脳機能(Top-downの内的要求)が、視床網様核を介して視床核の感覚情報処理に影響し、注意や知覚を制御し得る神経機構について、麻酔した動物(ラット)で、大脳皮質前頭前野の活性化が視床網様核細胞の感覚(聴覚と視覚)反応に及ぼす影響を調べた結果、大脳皮質前頭前野の活性化が視床網様核の聴覚、あるいは、視覚細胞の活動を修飾すること、修飾は、特定種の感覚情報を主に処理する1次の感覚視床核と複数種の感覚情報を報酬や情動に関連して処理する高次の感覚視床核に投射する2種類の視床網様核細胞にあることが明らかになり、これまでの研究で明らかにした視床網様核での感覚入力(Bottom-upの情報)の干渉にTop-downの情報要素が作用し、注意や知覚を柔軟に制御する神経機構の存在を示唆する論文を国際専門誌(European Journal of Neuroscience)に発表した。 体性感覚の情報処理に機能が特化するとされる1次視床核(後外側腹側核)の細胞活動に対する聴覚と視覚の影響を調べた結果、聴覚と視覚刺激が体性感覚の1次視床核細胞の活動を修飾することが明らかになり、感覚種に関係無く、1次の視床核で異種感覚の情報統合があることを示唆する論文を国際専門誌に投稿中である。 また、上記の研究結果を踏まえ、注意や知覚の制御について、Bottom-upの情報(感覚入力)とTop-downの情報(大脳皮質前頭前野からの入力)が視床網様核でのどのように統合、あるいは、競合するか調べる実験を施行した。
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