本研究は、組織学的手法を用いて、ヒトの大脳新皮質に新しい神経細胞を産生することのできる神経前駆細胞であるL1-INP細胞が存在するのかどうか明らかにする。さらに、L1-INP細胞の存在を確認できたならば、精神疾患患者の死後脳を用いて、L1-INP細胞数と精神疾患との相関関係について調べることを目的としている。 これまでに、げっ歯類のマウスとラット、霊長類であるマーモセットとアカゲザルの健康な成熟個体において、大脳新皮質にL1-INP細胞が存在していることを見出している。 本年度は、前年度に選定したヒトの組織染色に使用できる特異抗体を用いて、ヒトの脳組織において、L1-INP細胞が存在しているのかどうか確認した。ヒト脳サンプルは、脳バンクより提供を受けた。L1-INP細胞の分子マーカーである、Ki67とGAD67を用いて染色したところ、大脳皮質1層に、二重陽性の細胞を確認することができた。この結果は、送られてきた2 例の健常者の脳サンプルに対して行われたものであり、現状予備的検討ではあるが、今後、例数を増やしつつ、抗体染色の条件など、確固たる証拠となるよう慎重に検討していく。
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