私はこれまでの研究により、大脳皮質バレル野4層における興奮性細胞間に形成される双方向性のシナプス結合は神経細胞の細胞系譜に依存して形成されることを明らかにした。本研究課題では、細胞系譜に依存して形成されるシナプス形成が生後の感覚入力の影響を受けるかどうかを検証した。発達期のマウスのヒゲを数日間切ることでヒゲからの感覚遮断を施したところ、ヒゲを切ったマウスでは、細胞系譜依存的な双方向性結合の形成が阻害されることを見出した。さらに、系譜が異なる細胞間の双方向性結合には影響しなかった。以上の結果より、大脳皮質における系譜依存的なシナプス形成は、生後の経験に影響を受けることが明らかになった。
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