研究課題/領域番号 |
17K07086
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
島田 忠之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (80379552)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軸索分枝形成 / うつ・不安行動 / セロトニン |
研究実績の概要 |
Neuritinの各種ノックアウトマウスに対して、扁桃体と側坐核におけるセロトニン神経の軸索について観察した。抗セロトニン抗体により染色されるものをセロトニン神経の軸索とみなし、脳切片の該当領域において染色された軸索が全体に占める面積の割合を算出した。その結果、Neuritinホモノックアウトマウスは野生型、およびヘテロノックアウトマウスと比較してセロトニン神経の軸索が占める面積が有意に少なかった。これはセロトニン神経の軸索分枝の形成が、Neuritinにより促進されていることを示唆している。 同様に、マウス胎児より得たセロトニン神経を初代培養した場合において、Neuritinホモノックアウトマウス由来のセロトニン神経の軸索は、ヘテロノックアウトマウス由来のセロトニン神経の軸索と比較して、軸索分枝の本数、軸索分枝の長さが、それぞれ小さくなっていた。このこともセロトニン神経の軸索分枝形成にNeuritinが関与していることを示唆する。 Neuritinホモノックアウトマウスでは、うつ・不安行動が促進していたことと合わせ、Neuritinによるセロトニン神経の扁桃体、側坐核における軸索分枝形成が、マウスのうつ・不安行動の抑制に関わっていると考えられる。 また、マウスへのストレス負荷による、うつ・不安行動の誘発と、それに伴うNeuritinの発現量の変化についてはストレス負荷によるうつ・不安行動の誘発までは成功しており、適切なNeuritin抗体による脳切片の染色条件を探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Neuritinノックアウトマウスを用いた免疫組織学的解析および神経細胞の初代培養により、in vivo、in vitroにおけるセロトニン神経の軸索分枝形成にNeuritinが関与していることが示された。これは当初の予測を裏付けるものである。 また、ストレス負荷によりマウスに生じるうつ・不安症状を検出する手法についても確立することができた。Neuritinの発現量を免疫組織学的手法により解析する手法については現在条件検討中であるが、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにストレス負荷を与えた場合に、Neuritinの発現量に変化があるか、またセロトニン神経の軸索分枝にも変化があるのかを免疫組織学的手法を用いて解析する。標的としては扁桃体および側坐核を観察する。 Neuritinによるセロトニン神経の軸索分枝の形成に関して、どのようなシグナル分子が関与しているのかを解析する。海馬歯状回顆粒細胞において、NeuritinはFGFシグナルに関与して軸索分枝形成を誘導していたため、セロトニン神経においても同様であるかを、第一に解析する。 セロトニン神経を初代培養し、精製Neuritinタンパク質を加えて軸索分枝形成が促進されるか、FGFシグナル阻害剤により分枝形成は阻害されるか、FGFを添加することでセロトニン神経は軸索分枝形成が促進されるのか、Neuritinノックアウトマウス由来のセロトニン神経ではFGFを添加することでセロトニン神経の軸索分枝形成が促進されるのかを順に解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
Neuritinの発現量を免疫組織学的手法を用いて解析する手法が確立していないため、その解析に関連する費用として次年度に使用することを計画している。 また、マウスにストレス負荷を行い、うつ・不安症状を引き起こすためにはBalb/cマウス系統が必要であることが明らかとなったため、現在C57BL/6系統で維持しているNeuritinノックアウトマウスの戻し交配中である。戻し交配終了後の解析に必要な実験のための費用は次年度以降の、戻し交配が終了した後に使用することを計画している。
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