作成したBALB/c系統のNeuritinノックアウトマウスを用いた行動実験の結果、C57BL/6マウスと同様にNeuritinノックアウトマウスにおいては野生型マウスと比較して、うつ・不安様行動を起こしていることを見出した。また、BALB/c系統のNeuritinノックアウトマウスの扁桃体におけるセロトニン神経の軸索密度を計測したところ、やはりC57BL/6マウスと同様にNeuritinノックアウトマウスにおいては扁桃体におけるセロトニン神経の軸索密度が減少していた。 これらの結果は、Neuritinがセロトニン神経の軸索分枝形成を制御することで、マウスのうつ・不安様行動を制御していることを示唆する。 また、これまでの成果からNeuritinがFGFシグナルを制御していることがわかっていたため、マウス個体にFGF受容体の活性化阻害剤を慢性的に投与し扁桃体におけるセロトニン神経の軸索密度を計測したところ、阻害剤投与マウスはセロトニン神経の軸索密度が低下していた。 この事実と、これまでの成果から、Neuritin-FGFシグナルにおけるセロトニン神経の軸索分枝形成メカニズムが、個体におけるうつ・不安様行動を制御していることが示唆される。具体的には、個体が受けるストレスの増加によりNeuritin発現量が低下し、それに伴いFGFシグナルの活性が低下することでセロトニン神経の軸索分枝が減少し、セロトニンシグナルの入力が小さくなることで、個体にうつ・不安様行動が引き起こされると考えられる。
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