研究課題/領域番号 |
17K07087
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
板東 良雄 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (20344575)
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研究分担者 |
吉田 成孝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20230740)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / 小胞体ストレス / 自己抗体 / MBP |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)は炎症細胞の浸潤とともに髄鞘が傷害され、再発により症状が増悪する。我々はヒト剖検脳標本やマウスMSモデルを用いた解析から髄鞘構成蛋白であるミエリン塩基性蛋白(MBP)の蛋白構造の変化が本疾患の再発に関与している可能性をこれまでに見出している。本研究では、培養細胞を用いてMBPの構造変化に伴う髄鞘の異常形成機構における小胞体ストレス応答の分子機序を明らかにすることを目的とした。 平成29年度はマウスES細胞由来培養オリゴデンドロサイトの樹立を行い、各種ストレス誘導剤による21kDa MBPの発現変化について検討を行った。多発性硬化症や視神経脊髄炎の発症機序に関連のある小胞体ストレスや抗MOG自己抗体を用いて、培養オリゴデンドロサイトの培地に添加した際の変化について検討を行った。小胞体ストレス誘導剤としてツニカマイシン(Tm)を用いた。 Tmおよび抗MOG自己抗体刺激24時間後の細胞の形態を観察したところ、いずれにおいても細胞のサイズが異常に大きくなることが明らかとなり、21kDaに相当するMBPの発現上昇が特異的に認められた。さらに変性MBPを認識する抗体を用いて検討したところ、21kDaに相当するMBPのみを特異的に認識することが明らかとなった。 本研究により、ヒトMSやマウスMSモデルで認められたMBPの構造変化が培養細胞レベルでも再現できることが明らかとなったことから、変異MBPの制御法の開発を進めることによって、将来的にはMSの新しい治療法の開発ツールとしても期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は研究計画に基づき、予定通りに研究計画を実施し、結果を含め順調に遂行できた。具体的には、マウスES細胞由来培養オリゴデンドロサイトの樹立を行い、各種ストレス誘導剤による21kDa MBPの発現変化について検討を行った。多発性硬化症や視神経脊髄炎の発症機序に関連のある小胞体ストレスや抗MOG自己抗体を用いて、培養オリゴデンドロサイトの培地に添加した際の変化について検討を行った。小胞体ストレス誘導剤としてツニカマイシン(Tm)を用いた。 Tmおよび抗MOG自己抗体刺激24時間後の細胞の形態を観察したところ、いずれにおいても細胞のサイズが異常に大きくなることが明らかとなった。また、western blot法を用いて検討を行ったところ、21kDa MBPの発現上昇が特異的に認められた。さらに変性MBPを認識する抗体であるQD9を用いて同様にwestern blotによる解析を行ったところ、QD9が認識するMBPアイソフォームは21kDa特異的であることが分かった。以上のことから、小胞体ストレスや抗MOG自己抗体により、21kDa MBPの発現上昇が起こるとともに構造的に異常な変性MBPが細胞内に蓄積した結果、細胞のサイズが異常に大きくなることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は平成30年4月より異動となったため、環境がこれまでと異なっているが、本研究に必要な設備・環境を速やかに整え、平成30年度も研究計画に基づき、順調に実施する予定である。研究内容については特に変更はなく、当初の目的を達成できた場合には平成31年度予定の研究計画を前倒しにして行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの繰り越しが発生した理由については、研究代表者が平成30年4月より旭川医科大学から秋田大学に異動することが決定したことにより、移動先の秋田大学の教室において速やかに研究を再開するためには購入しなければならない試薬や消耗品が多数あることが予想され(研究分野が全く異なっており、必要な試薬はほとんどないと考えられたため)、旭川で購入しても物品の移動に余計な費用がかかることや試薬の移動に係る書類手続きが煩雑となる場合もあることから、秋田大学で必要な試薬や消耗品を新しく購入する費用等に充て、有効に使用させていただきたい。
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