研究課題
多発性硬化症(MS)は炎症細胞の浸潤とともに髄鞘が傷害され、再発により症状が増悪する。しかしながら、根治療法の糸口が見えていない。我々は髄鞘構成蛋白質であるMBPの構造異常の変化が本疾患の再発に関与している可能性を見出している。本研究ではマウスMSモデルならびに培養細胞を用いてMBPの構造変化に伴う髄鞘の異常形成機構の解明とその制御法の開発を目指して実施した。令和元年度は昨年度に引き続き、研究計画に沿って研究を遂行した。昨年度に得られた知見を元に小胞体分子シャペロンGRP78/Bip選択的誘導剤であるBIXをマウスMSモデルであるEAEに投与することによってEAEの症状を改善できるか否かについて検討を行った。投与法ならびに投与量についての詳細な検討は今後の課題であるが、BIXによる症状改善効果が認められ、形態学的にも異常な髄鞘構造をもつ軸索の数は優位に抑制したことから一定の効果は認められた。平成29年度から今年度までに実施した研究結果をまとめると、(1)小胞体ストレスあるいは髄鞘構成タンパクに対する自己抗体によってオリゴデンドロサイトにおけるMBP産生能が亢進する。(2)発現量が増加したMBPのアイソフォームの一つが小胞体ストレスによって細胞内で変性を起こす。(3)4つのアイソフォームをもつMBPのバランスが崩れ、異常な髄鞘が形成される。(4)変性蛋白質の産生を抑制することにより異常な髄鞘構造の出現も抑制することが出来る。(5)この抑制はin vitroでもin vivoにおいても一定の効果を示す。以上のことから、ERストレスによって惹起される異常な髄鞘構造の形成を分子シャペロン誘導剤によって改善することが期待でき、一定の治療効果を有する可能性が示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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