研究課題/領域番号 |
17K07088
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
森 文秋 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60200383)
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研究分担者 |
三木 康生 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30709142)
若林 孝一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50240768)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 / 核内封入体病 / P小体 / ストレス顆粒 |
研究実績の概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症の原因蛋白(FUS、OPTN、VCP、UBQLN2、SIGMAR1など)はポリグルタミン(PolyQ)病および核内封入体病(INIBD)の核内封入体にも存在し病理発生機序への関連が示唆される。最近、孤発性筋萎縮性側索硬化症の剖検脳組織を用いたmicroRNA解析により、RNA分解酵素であるDIS3L2が変動していることを示唆する所見を得た(Acta Neuropathol Commun 2: 173, 2014)。そこで、PolyQ病とINIBDにおける3’-5’RNA分解酵素(DIS3L2)および5’-3’RNA分解酵素(XRN1)の免疫染色性について検討した。 ハンチントン病(n=3)、DRPLA(n=5)、SCA1(n=3)、SCA3(n=5)、INIBD(n=5)、正常対照(n=5)のホルマリン固定パラフィン包埋切片を作製。DIS3L2と XRN1に対する抗体を用い免疫染色し光顕観察した。 正常対照では神経細胞の胞体および核がDIS3L2弱陽性となり、グリア細胞の核は強陽性を示した。XRN1免疫染色では神経細胞の胞体は染まらず、ニューロピル、グリア細胞の胞体および突起に微細顆粒状の構造物が認められた。PolyQ病の核内封入体はDIS3L2、XRN1ともに陰性であったが、INIBDの核内封入体は神経細胞ではDIS3L2で59.3%、XRN1で55.1%が陽性を示し、グリア細胞では両者ともに90%以上が陽性であった。マリネスコ小体はDIS3L2で19.4%、XRN1で50.3%が陽性を示した。 DIS3L2およびXRN1は細胞質のRNA分解により細胞内RNA代謝に重要な役割を果たす。INIBDの核内封入体における2種のRNA分解酵素の存在は、INIBDの病理発生機序にRNA分解過程の異常が関与している可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた核内封入体形成を特徴とする神経変性疾患のヒト標本の免疫組織学的検討について滞りなく実施できたため、おおむね実験計画に沿って研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、NIBDのmicroRNA解析を実施する。 【対象】INIBD(n=5)において核内封入体が高頻度に認められる前頭葉並びに対応する正常対照(n=5)のパラフィン切片を用いる。 【方法】1)各組織からmicroRNAを抽出し、DNAチップ(東レ3D-geneチップ、約1800種のmicroRNAプローブを搭載)でmicroRNAを比較分析する。十分なシグナル強度の遺伝子発現レベルを対象として健常組織に比ベ発現が増大したmicroRNAと減少したmicroRNAを検出する。 2)microRNAが標的とする数多くの遺伝子群の中から妥当な標的遺伝子の予測をin silico予測ツールとバイオインフォマティクスの手法を用いて検討する。 3)病理標本上で、病態関連候補分子の発現を検証する。
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